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シャムスカは今もトリニータを愛す。
西川、森重、清武にファンとの逸話。 

text by

沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

PROFILE

photograph byPericles Chamusca

posted2020/05/22 11:40

シャムスカは今もトリニータを愛す。西川、森重、清武にファンとの逸話。<Number Web> photograph by Pericles Chamusca

大分トリニータ、ジュビロ磐田で監督を務めたシャムスカ氏(右)。現在はサウジアラビアで指導者キャリアを積み上げている。

金崎&清武の活躍も嬉しい限りだ。

――FW金崎夢生(現名古屋グランパス)も、2008年からレギュラーに抜擢しました。

「彼も非常に若かったが、技術がしっかりしていたし、『絶対に成功するんだ』という強い気持ちを持っていた」

――MF清武弘嗣(現セレッソ大阪)にも多くの出場機会を与えました。

「西川、梅崎(司。現湘南ベルマーレ)らと同様、彼もクラブの下部組織出身。惚れ惚れするようなテクニックと優れた判断力を備えていた。後にブンデスリーガや日本代表でも活躍したが、彼の力からすれば当然だろう。

 トリニータは下部組織がしっかりしており、優秀な選手を大勢育てていた」

――彼らのことは、今でもフォローしていますか?

「日本代表でプレーしたときはいつも注意して見ていたし、クラブでの試合も可能な限りチェックしている。自分が指導した選手がその後も活躍する姿を見るのは、本当に嬉しいものだ」

2008年の快進撃と翌年の経営難。

――2008年の快進撃について説明してください。

「就任以来、私が植え付けてきた戦術、考え方、フットボール哲学が浸透したという手ごたえがあった。攻撃の選手に守備のタスクを与えると同時に、守備の選手にも攻撃のタスクを与えた。全員が高い守備意識を持つ一方で、チャンスには人数をかけて攻める全員守備、全員攻撃のフットボールがナビスコカップとJリーグの多くの試合で実現できた。

 クラブ関係者の献身も見事だったし、サポーターの後押しも大きな助けとなった」

――大分は2009年に重大な経営危機を迎えます。それまでチームを率いていて、そのような気配を感じていましたか?

「大口スポンサーが撤退したことは知っており、強化費も激減していた。それでも、コーチングスタッフ、選手、職員への給料支払いが一度も遅れなかったことに逆に驚いた。

 もしこれが南米のクラブだったら、間違いなく給料が出なくなっていたはず。日本人の誠実さを改めて感じた」

――現在、大分トリニータと同じ九州に本拠を置くサガン鳥栖が経営危機を迎えています。

「そのようだね。九州では、フットボール以外のスポーツも人気があり、クラブが安定した経営を維持するのはかなり困難なようだ。でも、鳥栖にも何とか踏みとどまってほしい」

【次ページ】 中東各国は低迷を脱しつつある。

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