熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
シャムスカは今もトリニータを愛す。
西川、森重、清武にファンとの逸話。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byPericles Chamusca
posted2020/05/22 11:40
大分トリニータ、ジュビロ磐田で監督を務めたシャムスカ氏(右)。現在はサウジアラビアで指導者キャリアを積み上げている。
提示した戦術とメンタリティとは。
――具体的には、何をしたのですか?
「戦術面では、守備組織の整備が急務だった。高い位置からプレスをかけ、前線の選手にも守備のタスクを与えた。そして、ボールを奪ったら勇気を持って攻める。
チーム状況からして“アウェーだから引き分けでいい”という贅沢は許されなかった。ホームではもちろん、アウェーでも勝ちに行くと選手に伝えた。
そこで死活的に重要だったのが、それまで負け続けて打ちひしがれていた選手たちに自信を取り戻させること。『君たちはできる。どんな相手にも勝てる』と言い続け、モチベーションを高める動画を見せ、主力選手と個別に話し合うなど、あらゆる手段を講じた」
――そして、最初の試合で強豪・浦和レッズをアウェーで倒しました。
「埼玉スタジアムの巨大なスタンドは、浦和のサポーターで真っ赤に染まっていた。あらゆる面で非常に厳しい状況だったが、選手たちは日本へやってきたばかりの私を信じ、私が授けた戦術と指示を忠実に実行してくれた。
前半に先制し、その後、追いつかれたが下を向かず、終盤にマグノ・アウベスのゴールで勝ち切った。この結果には、クラブ関係者ですら驚いていた(笑)」
――最終的に、この年は11位まで順位を上げました。
「最初にアウェーで難敵を倒したことで、選手が自信をつけた。レギュラーも固まった。
その後は、相手に応じて戦術を微調整しながら、すべての試合で勝利を目指した。積極的な守備、積極的な攻撃が機能した」
森重はカタールの監督時代に……。
――若手を積極的に起用し、成長を促して、日本代表にも送り込みました。最初に頭角を現わしたのが、GK西川周作(現浦和レッズ)です。
「闘志に溢れ、ポジショニングが良く、キャッチング技術に優れ、フィードも素晴らしい。GKとしては非常に若かったが、安心してゴールマウスを任せられた」
――森重真人(現FC東京)は、あなたがボランチからCBへコンバートしました。
「2006年に加入した際、それまでボランチだったが、フィジカル能力が高く、空中戦に強く、ロングフィードもうまい。CBとしての方が適性があると判断した。その後、日本代表入りし、2014年ワールドカップ(W杯)で彼の姿を見ることができて嬉しかった。
素晴らしいCBで、カタールのクラブを率いていた頃、獲得を試みた。でも、FC東京が手離そうとしなかった(苦笑)」