話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「スーパーサッカー」元Pが語る。
終了危機、ライバル、YouTube。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTBS Television
posted2020/05/24 20:00
テレビ業界において、1つの仕事を30年近く続けられることは稀だ。名鏡康夫氏はサッカー漬けの生活に感謝しているという。
『FOOT×BRAIN』、『やべっちF.C.』への意識。
コロナの影響を受けて今、テレビ界ではオンラインで番組作りをするなど、新たな波が起きて、進行している。この傾向はアフターコロナも続きそうな気配で、サッカーの番組の見せ方や取材などにも大きな変化を及ぼしていきそうだ。
――コロナの影響で番組への出演がオンラインになり、画面の景色や取材の手法などがかなり変わってきました。
「しばらくはオンラインのスタイルになるんでしょうね。インタビューとかも昔は例えば海外の選手の取材は、現地でカメラを用意して撮ったものを衛星で送ってもらって編集して訳をつけて出す流れだったけど、今はオンラインで簡単にできてしまう。
映像も5Gで撮ればもっと鮮明になるので、海外とか現地に人を飛ばす必要性とかなくなります。それがいいのかどうかは別として、コロナの影響でテレビに限らず、あらゆるメディアの手法が変わっていくと思います」
――そういう流れの中、今後のサッカー番組の在り方をどう考えていますか。
「『FOOT×BRAIN』とかはその答えの1つだと思います。個性というか特色のあるものを出していくのはいいと思う。海外に特化するのもありだし、アイドルチックな取り上げ方で選手を盛り上げていくのもいい。それが評価されるかどうかは分からないですけどね。その中で『スーパーサッカー』は、これとは決めず、いろんなことをやっていけばいいし、それが逆に自分たちのスタイルになっていると思います」
――『FOOT×BRAIN』、『やべっちF.C.』は気になる存在ですか。
「気になりますね。『やべっち』を見ていると僕らの影響を受けて面白い企画をやっているなと思いますし、『FOOT×BRAIN』は違うタイプの番組で興味深いです。ただ、目くじら立ててライバル視することはなかったですね。
一緒にサッカーを盛り上げてきましょうというところでは共存していく仲間みたいなものですし、こんなのを『やられたなぁ』というのもなかった。自分たちは自分たちだというプライドを持ってやっていましたから」
YouTubeへの危機感。
――スーパーサッカーが大事にしていたものとは。
「選手の素を見せることですね。バナナキングとかの企画は、やっているうちに選手の本気や素が見えてくるのが面白いんですよ。Jリーグ優勝チームの放送も1、2人の選手で振り返っても面白くないので、なるべくたくさんの選手を出していました。しゃべらない選手がいてもいい、無礼講で騒ぐ中で選手の素が見えてくるのが面白いんです。
そういうのを大事にしているんですが、最近はそれをYouTubeとかで簡単にやっている。元選手が現役選手にちょっとお願いしますみたいなノリで作っているので、選手の素がすごく出ているんですよ。そういうのを見ていると『ヤバいな』と番組制作に関わっていた人間としては危機感を抱きますね」