欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
バルセロナに球蹴りが戻ってきた。
親子の路地裏フットボールの幸せ。
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2020/05/21 07:00
長い外出禁止から明けて、ボールと戯れる子どもたち。バルセロナの街中にフットボールのある日常は少しずつ戻っている。
ボールを持った男の子と母親が。
グラシア地区には画になる小道が多い。小さなボールを持った男の子が母親とやってきた。
「日本のスポーツカメラマンなんだけど、撮影大丈夫?!」
「日本のメディアが何してるの?」
「今、バルセロナで誰かとボールを蹴りあえるのは親子だけだよね?! そんなシーンを記録したいし、届けたいと思っているんだけど」
「良いわ、私も新聞記者よ。今は休職中なんだけど」
その光景を窓から身を乗り出し眺めている人がいる。小さなベランダで無理やり日光浴をしている人がいる。一見楽しげな風景も、今だからのものだろう。通りに面する個人商店のシャッターはほとんど閉まっている。
「子供達とこんな時間を……」
さらに30分ほど歩くと、角を曲がった先にボールを蹴る親子を見つけた。「オラ!」と声をかけ、ずれたマスクを直して近づいていく。
「だいたいこの時間に息子とボールを蹴っているよ。最近はちょっと暑くなってきたから夜ご飯前にやるときもあるね。確かに、大変なことは一杯ある、仕事もストップしちゃってる。でも、以前は子供達とこんな時間を過ごすことはほとんど無かった。普段はバイクなんかも通るし、この辺は観光客も多い。家の前でサッカーなんてできなかったよ。でも、今はできる(笑)。そんな良い部分だけを見つめて、過ごすようにしているんだ」