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アフガン出身、父暗殺、そして医者に。
偉大な女性サッカー選手の数奇な人生。 

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フランク・シモン

フランク・シモンFrank Simon

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photograph byCharlotte Robin/L'Equipe

posted2020/05/12 19:00

アフガン出身、父暗殺、そして医者に。偉大な女性サッカー選手の数奇な人生。<Number Web> photograph by Charlotte Robin/L'Equipe

ナディア・ナディムは、PSGを去る前に女子CLのタイトルを獲ることを宣言している。同時にパリで医者になることも。

いつの日か祖国アフガニスタンでの活動も。

 流暢に話すフランス語も、好きな単語が幾つかあるという。

「好きなのは『アレット!』(=やめて! の意)と『フランシュモン』(=率直に言ってなどの意)のふたつ。特にアレットは、フランス語らしくて気に入っているからいつも使っている。それからピッチで怒りが抑えられないときには、思わず『プータン』(=くそなどの意)と叫んでしまう(笑)」

 彼女が今日情熱を傾けているテーマは、世界で苦しむ人々に快適さを与え、力強いメッセージを送ることである。だが複数の民間非営利団体を通じての、差別をなくし難民の権利を得るための活動はデンマーク時代から継続的に続けている。そして今、彼女の関心は祖国であるアフガニスタンへと向けられている。

「ある時期から頭の中に考えが芽生えた。何年かしたらアフガニスタンに戻りたいと。そして何が変わったのかを見届けたい。

 確かなことは何ひとつないけど……私は今、ある民間組織と女性たちのグループとともに対人地雷撤去活動をおこなっている。アフガニスタンにはまだ一度も戻れていないけど、父方の家族はまだそこに住んでいる。私が生まれた国だし、私が何かすることで幾つか扉が開くかもしれない。女性も学校に行けるようになり、自由にスポーツができるようになる日が来れば……」

「3年のうちにパリで医者の仕事も始めたい」

 少女の時代に劇的な環境の中に身を投じざるを得なかった彼女にとって、自らのルーツに立ち返ることは大きな意味を持つ。だが、その回帰の旅に出かける前に、彼女にはパリでやるべきことがある。PSGのタイトル獲得に貢献することである。

「思うにPSGとリヨン(OL)には、レアル・マドリーとバルセロナのようなライバル意識がある。扉は開きかけていて、クラブの野心に私も同調した。私は単にタイトルを獲得できるクラブにいたいのではなく、大いなる征服のための力になりたい。OLには最大限の敬意を払うべきだけど(現在女子チャンピオンズリーグ4連覇中。6度優勝は歴代最多)、私たちだってヨーロッパチャンピオンに近いところにいるのは間違いない(過去2度決勝に進むもフランクフルトとOLに敗れる)。両者の差は縮まっている。日々のトレーニングの中でそれは実感している」

 両者の対戦は3月14日に予定されている(註:新型コロナウイルス禍によりその前にシーズンは終了してしまったが)。アーセナルとのチャンピオンズリーグ準々決勝第1戦の2週間前である(註:同前の理由で延期)。そしてシーズンが終われば、ナディアはデンマークに戻って外科医になるための医学の勉強を続ける。

「元々はアメリカで始めて、授業に出席する必要がない理論の単位は3カ月かけて獲得した。でも実習は義務だから、シーズン後にデンマークで2カ月間それにかかわる。その後でまたプレーに復帰するつもり。

 ここパリでは主に研究に携わっている。3年のうちにパリで医者の仕事も始めたい。たとえ90歳になるまで5対5でプレーを続けるにしても、もうひとつの人生にも精いっぱいのエネルギーを捧げたいと思っている」

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