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感染リスク、中立地開催案で“内戦”。
プレミア再開は本当に実現できるか? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/05/08 20:30

感染リスク、中立地開催案で“内戦”。プレミア再開は本当に実現できるか?<Number Web> photograph by Getty Images

リバプール本拠地のアンフィールドのピッチには、NHSへの感謝を伝えるメッセージが刻まれている。

最大4万件の検査を要する可能性。

 対戦相手はリバプール、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナルなど上位勢が多いが、今季はホームでトッテナムとチェルシーから計4ポイントを奪っている。ただしアメックス・スタジアムは中立的な会場の1つに選ばれる可能性が大でも、自分たちの試合では使えないのだ。

 一方、賛成派に言わせればホームアドバンテージがなくなるデメリットはお互い様。従って、利己的な考えは捨てるべきだということになるのだろう。だが、高尚な観点から物を言うのであれば、シーズン再開そのものが道徳的に許されるのかどうか?

 英国では5月最初の週末を終えた時点で、新型コロナウイルス感染による死者数が計2万8446人に上っている。感染の有無を確認する検査も、政府が掲げた1日10万件の目標がようやく達成され始めたところで、5月3日には目標値を2万件以上も下回った。

 プレミアリーグは、400万ポンド(約5.4億円)の予算を割いて、週に最低2回は選手とチームスタッフに対する検査を実施する意向だ。となると、今季完結のデッドラインと意識されている7月末までに、最大4万件ほどの検査を要することになる。その煽りを受け、医療従事者をはじめとする、いわゆる「キー・ワーカー」への検査が行き届かなくなるようなことがあってはならない。

アグエロらも不安を明かしている。

 筆者にも病院の介護施設で働く友人がいるが、彼はほんの2週間ほど前からゴーグルやマスクといった個人防護具を着けて仕事に当たれるようになり、検査も受けられるようになったばかりだ。

 感染リスクに関しては選手の説得がシーズン再開への最大の問題であり、最大の鍵でもあると言える。どの選手も心のなかではチーム、そしてファンのためにプレーしたくてうずうずしているに違いないが、再開が決まったとして、全員が揃って「よっしゃ!」と反応するとは思えない。

 セルヒオ・アグエロ(マンC)やアントニオ・リュディガー(チェルシー)のように、肉体的な接触が当たり前のピッチで、相手選手にウイルスをうつしてしまったり、自宅にウイルスを持ち帰ったりしてしまう不安を口にしている選手もいる。

【次ページ】 感染リスクの低さを証明できるなら。

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