プレミアリーグの時間BACK NUMBER
感染リスク、中立地開催案で“内戦”。
プレミア再開は本当に実現できるか?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/05/08 20:30
リバプール本拠地のアンフィールドのピッチには、NHSへの感謝を伝えるメッセージが刻まれている。
無観客+最大10会場の中立地開催。
試合は無観客が大前提。9月までの開幕が目標とされる来季も、スタンドに「12人目」のチームメイトを配すことのできない状況が想定されている。
また、試合会場は最大でも10カ所に限定。周辺にファンが集まる事態を避けるべく、住宅街や町の中心部から離れた条件で、かつ近代的スタジアムとなると、プレミア所属クラブの多いロンドンだと、ウェンブリー・スタジアム以外はウェストハムのロンドン・スタジアムぐらいだろう。
選手たちは最低2mのソーシャルディスタンスを免除されても、キックオフまで互いの接触を極力控えなければならない。ウォームアップ中も同様で、相手チームとの握手も禁止。3名から5名への交代枠拡大が検討されている試合中には、得点後にチームメイトと抱き合って喜ぶことも許されない。
テレビ観戦しかできないファンのためのコンテンツを増やし、同時に試合後の拘束時間を減らす手段として、ハーフタイム中にメディア対応を求められる可能性もある。
残留圏内ギリギリのクラブは……。
当然、従来とは違う試合環境に対する抵抗がないわけではない。
3月半ばからのリーグ中断後、毎週木曜にプレミア経営陣の遠隔会議が行われるたびに再開への「一致団結」が伝えられてきたが、いざ具体的な検討段階に入ると、クラブ間の意見の相違が報じられるようにもなっている。
「プロジェクト・リスタート」の実行は、20クラブの3分の2に当たる14クラブ以上の同意を必要とする。ところが『デイリー・ミラー』紙によれば、会議は「内戦」の様相だという。争点の1つである中立地スタジアムでの試合開催に関しては『タイムズ』紙にも「最大10クラブが難色を示している様子」とある。
確かに、シーズン途中からホーム&アウェイ方式という基本概念がなくなるのだから、大事には違いない。例えば、経営者が反対意見を公言しているブライトンは第29節終了時点で、降格圏からわずか2ポイント差の15位。残る9試合のうち5試合がホームゲームだったことを考えると、ホームアドバンテージも利用して降格圏内への転落を避けたい気持ちも理解できる。