衝撃的だった初めてのフリー打撃。

　その中で始まった話題のドラフト1位ルーキーのフリー打撃だ。

　次々と豪快にスタンドに飛び込む打球に、まず目を奪われた。バックスクリーンを直撃する飛距離140m級の特大弾に度肝を抜かれた。

　しかし一番、驚かされたのはまったく別のことだった。

　1球、2球、3球……松井が連続してボールを見逃していく。見逃した球はコースを大きく離れたボール球、いわゆる“クソボール”ではない。微妙に外れたボール球に、松井は一切、手を出そうとしなかった。

「何となく通用するのかな、という感じ」

　ルーキーのキャンプ初フリー打撃だ。

「打ちたい」「いいところを見せたい」とはやる気持ちで、ついつい多少のボール球に手を出してしまう。これが当たり前の光景だ。

　しかし松井は違った。

　当時、スポーツ紙で巨人担当をしていた筆者はすぐにフリー打撃の大爆発とともに「打撃投手がノーコンでストライクが入らなかったが、しっかりとボールを見極めた」と原稿にした。

　余談だが翌日に広報担当から「打撃投手は生活がかかっているのにノーコンなんて書くな！」と怒られたのもしっかり覚えている。それぐらいに印象深い、ルーキー離れした出来事だったのである。

「もちろん色々とダメなこともあった。でも、キャンプの頃はそれでも何となく通用するのかな、という感じでやれていたよね」

　後にこの頃を松井自身はこう振り返っている。

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