ぶら野球BACK NUMBER
斎藤雅樹はとんでもなく凄かった。
人のいい気弱な若者が遂げた変身。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byKyodo News
posted2020/04/27 11:40
信じられない数字を残した斎藤雅樹だが、素顔は人のいい気弱な青年だった。そのギャップもこの大投手の魅力だ。
目立たない若手がわずか数カ月で。
あれから30年が経った現在も平成初期の斎藤雅樹の活躍が、なぜこれほど印象に残っているかと言えば、圧倒的な数字に加え、そのストーリーにプロ野球というエンターテインメントの魅力が詰まっていたからだ。
伸び悩む“セイロク”が腕一本でチャンスを掴み、大人の世界において猛スピードで“平成の大エース”へと成り上がっていく様は、どんな映画よりもリアルでドラマチックだった。
何者でもない目立たないイチ若手選手が、わずか数カ月で人生を変え、球史に名を残す。2020年もそんな予測不能でスリリングなプロ野球を見るのが楽しみだ。開幕を待ちながらページをめくる、この手元の選手名鑑のどこかに、あの頃の斎藤雅樹のような未来の“令和の大エース”がいるはずだから。
See you baseball freak……