サリオスは内から抜け出したが……。

　一方のサリオスは、勝負どころから直線にかけて、内を通ることになった。

「どこかで外に出そうと思っていたが、あまり早く出すとロスがある。馬場の悪いところを走らされた」とレーン。

　4コーナーでは馬群に包まれ、馬場のいい外に行き場はなかった。そのかわり、コースロスのない内には進路があった。

　サリオスは、直線入口で前の2頭の間から抜け出し、外に進路を取りながら、ラスト200m地点で先頭に立った。レーンはさらに外に出ようとしたようだが、そのときにはもう、外からコントレイルが並びかけてきていた。

　コントレイルが一気にかわすかに見えたが、内のサリオスが差し返す。2頭の無敗のGI馬がびっしり馬体を併せ、後ろを離して叩き合う。福永は言う。

「直線は突き抜けるんじゃないかと思ったぐらいでしたが、さすがに相手も3戦3勝でGIを勝った強い馬ですから、簡単なレースにはならなかった」

福永「距離はもっとあっても大丈夫」

　2頭の激しい競り合いがつづく。もし観客が入っていたら、とてつもない大歓声で場内が揺れていただろう。

　ゴールまで残り5完歩ほどのところで、コントレイルがやや前に出た。その差を頭、首、と少しずつひろげ、半馬身前に出て、ゴールを駆け抜けた。

「よく押し切ってくれたと思います。正直、ダービーのことは頭に置かず、今日のレースを勝ちに行こうと臨んだのですが、結果的にこの内容なら、距離はもっとあっても大丈夫という走りを見せてくれましたね。ダービーも非常に楽しみになりました」

　そう話した福永は、19回目の皐月賞挑戦で初制覇を果たした。この勝利により、史上11人目のクラシック完全制覇を達成した。

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