東京・田園調布の長嶋邸で打撃指導。

　好好爺然としてのんびりした風貌と口調とは裏腹に、野球に対する向き合い方は厳しく、そして高度な理論に裏打ちされていた。

　そんな関根さんに傾倒したのが、現役晩年の長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督だったのである。

「長嶋さんが現役を引退した年（1974年）は、随分とバッティングで悩んでいた。そんな長嶋さんのところに関根さんを連れて行ったことがあったんです」

　深澤さんが関根さんに「長嶋さんのバッティングを見てやってくれませんか」と頼みに行くと、最初は「そんな出過ぎたことはできない」と関根さんは嫌がったという。

　それをなんとか説得して東京・田園調布の長嶋邸に引っ張っていくと、関根さんの顔はすっかり変わってしまったという。

容赦ない関根さんの言葉が飛んだ。

「何だ、そのグリップは！」

「なんでそんなに左膝が開く！」

　スイングを見て容赦ない関根さんの言葉が飛んだ。その言葉に長嶋さんも真剣に耳を傾け必死の素振りを続けた。

「関根さんの理論はまず基本を大切にすること。

　構えは自然体でそこから左足を踏み出すときに、バットを前腕で引っ張る。その引く力をいかにボールに伝えるかがスイングの力の源になるというものです。

　でも、その頃の長嶋さんはもう晩年で、どうしても体が突っ込んでしまう。すると関根さんは容赦なく『それじゃあダメだ』と怒っていました」

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