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Vリーグ優勝セッターが突然の退団。
“先生”へ転身した中根聡太の決意。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byV.LEAGUE
posted2020/04/07 11:00
ジェイテクトSTINGSの一員としてVリーグ優勝に貢献した中根聡太(中央奥)。春から母校・星城高校で後進の指導にあたる。
経過より結果にこだわる。
迎えた最後、2019/20シーズンは練習への取り組み方からガラリと変えた。「ヘタクソな自分は誰よりも練習をしなければ」と前のめりで練習の量ばかりにこだわった1年目の反省を活かし、あえて「練習しない」ことにも重きを置いた。
これまでならば、指にかかる感覚や1本1本の質、「何かおかしい」と思えば、できるまで練習した。そうしなければ不安だった。だが、いつしか「練習する」ことが目的となり、「これだけやった」ということに満足するばかりで、どれだけ「できたか」の成果に目を向けていないことに気づいた。
今自分がこだわるべきは、経過よりも結果。自主練習ではなく、全体練習で100%を出し切るべく、セッター出身の細田寛人コーチに1本1本トスの質や精度に対する評価を求め、練習試合から細かく出される数字と向き合った。セッターごとに出される、すべてのスパイカーに対するスパイク決定率、効果率と、出場したセットや試合の勝率。何よりわかりやすく示される「結果」で、チーム内のトップでいなければならない。
そのためには、トスの質や精度はもちろん、誰をどの場面で使うことが効果的で、決定率を高めることになるのか。熟考を重ねた末、夏場の練習試合で手応えをつかみ、Vリーグ開幕直後の2戦目、途中出場したサントリーサンバーズとの1戦で「やってきたことは間違いではない」と確信を得た。
「完璧に近いゲームメイクでした」
そして、重ねたすべてが理想的な形で発揮されたのが、ラストゲームとなった今年2月のパナソニックとのVリーグ男子決勝戦。そこで見せた中根のゲームメイクを、ミドルブロッカーの金丸晃大はこう称えた。
「今までの試合ならば僕に対してこの場面はAクイック(のトス)が来る、という状況でも相手の反応を見て、絶対に使ってこなかった。その代わり、同じ局面で徹底してサイドを使い続けました。だから相手は終盤になるとそれまでが布石だと見て“そろそろ(Aクイックが)来るだろう”とマークしてくる。そこで中根はBクイックを使うから、フリーで打てるし、また次にサイドが活きる。自分がどうしたいとか、自分の良さを出すのではなく、チームが勝つためにどうするかに徹していた。いい意味で、セッターが全然目立たない、完璧に近いゲームメイクでした」