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「金が王様」という状況の終わり?
コロナが変えたスポーツの優先順位。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2020/04/03 18:00
安全のために止めた以上、再開にはより大きな根拠、決断が必要になる。MLBもまた、先の見えないトンネルに入り込んでいる。
ハミルトン「なのにF1は……」
世界で最初に東京オリンピックの不参加を決めた国であるカナダは、アメリカと同じ北米大陸にあり、ブルージェイズの本拠地である大都市トロントのある国だ。
もしも、カナダGPがキャンセルされたとしたら、同GPの開催地モントリオールからそう遠くないトロントでスポーツ・イベントが開催されるとは思えないし、MLBも同調せざるを得ないだろう。
もっと大事なことは、かつて大きなスポーツ・イベントを牛耳っていた人々が、その決定権を失いつつあるということだ。
たとえば3月中旬、F1の開幕戦オーストラリアGPが強行されようとしていた時、通算6度も王者になったレーサーのルイス・ハミルトン(英国)は、こう話している。
「我々が今ここにいることに、とても、とても驚いている。レースがあるのは結構なことだが、我々が今、ここに座っていることがショックだ。(中略)トランプ(大統領)は国境を閉鎖したし、NBAも中断した。なのにF1は続いているんだ」
「金が王様」という状況すら変わりつつある。
ハミルトンは「金が王様だ」と付け加えたが、「金」が大きなスポーツ・イベントの「王様」として大きな決断を下すというのは、F1だけに限ったことではない。
F1同様、東京オリンピックやMLBも、すでに被った経済的な損失を少しでも抑えたかった。だから、パンデミックの初期段階ではイベントの延期や中止を性急に決定することはなく、「その内に事態は好転する」という希望的観測の下で「決断」が先送りにされてきたのだ。
だが、この1カ月の間に事態は好転するどころかさらに悪化し、もはや「金」は「王様」ではなくなりつつある。
メジャーリーガーは3月半ばのキャンプ中止以来、(日本のプロ野球選手のように)無観客のオープン戦も練習試合もしてないし、チーム練習すらやってないが、それでも選手たちはこの非常事態を受けて、少ない準備期間で「完調じゃなくてもプレーしたい」と主張するだろう。