マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大阪桐蔭の天才が社会人で完全復活。
峯本匠のドラフトイヤーが始まった。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2020/03/30 11:15
2019年の都市対抗で、峯本匠は優勝にとって欠かせない存在だった。今年はドラフトイヤー、果たして。
差し込まれても跳ね返すスイング。
ただ、これがあるんだよな……と思ったのが、その日最初の打席。
追い込まれてからのカーブに、のめって無理やり合わせた打球が、コロコロと三塁手前の「フェア」になった。
“手が上手い”打者は、打ち損じがフェアーになってしまって勿体ないことがある。これをファールにできれば、「打ち直し」ができて有利になる。
修正するように、続く2回の打席は左方向へ巧みに打球を飛ばした峯本。
2打席目のスライダーをレフト前に運んだヒットより、3打席目、速球に差し込まれながら、スイングスピードで押し返し、遊撃手の腰がひけるほどの打球を飛ばしたインサイドアウトのスイング。
この打ち方ができれば、何も心配ない。
今の軌道で振り込んでいけば、暖かくなって体がキレてくるこの先、グングン伸びていく打球が広角に飛んでいく。
JFEの野手コーチは山森雅文。
田中広輔の2年目が、ちょうどこんな感じで始まったことを思い出す。
今は「カープの顔」の1人となった、社会人出身内野手のアマチュア次代が重なった。
「大学の頃は、下半身の故障があったみたいですけど、今はまったく言わなくなりました。とにかく、ハートがすばらしい。練習ではあまり目立たないかもしれませんが、実戦での強さは、モノが違います」
JFE東日本で、野手たちの面倒を見ているのが山森雅文コーチだ。
阪急ブレーブスでは快足とスーパーディフェンスの外野手だった。西宮球場のレフトフェンスのへりに駆け上がってホームラン性の打球を捕球し、メジャーから表彰を受けた。千葉ロッテのスカウトとしても長かった。
同僚の今川優馬も、貴重な右打ちの「ハードパンチャー」としてプロ注目の存在だが、今日は体に強いハリが出て、試合を休んでいた。
「ケガするほど練習するのが、今川です。こっちが気にしてあげないと、壊れてしまうほどやりますから。峯本は、野球が上手い。そこにもってきて、ここ一番の勝負根性、勝負度胸がすごい。意欲が違う」