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大谷翔平から「頑張ってるね」って。
プロ生活3年、25歳が選んだ再起。
posted2020/03/29 20:00
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Daiki Tanaka
「10年後、大谷に『がんばってるな』って言ってもらいたい」
これから学びの場となる机の前で、未来の自分について柔和な表情で語ったのは、森山恵佑。1994年生まれの、球界ではいわゆる大谷翔平世代だ。星稜高から専修大へ進学し、2016年ドラフト4位で北海道日本ハムファイターズに入団した。先にプロの世界に進んでいた同い年の大谷と、同じチームでプレーした。
「彼は別世界の存在でした。途中からいちファンとして見ていた気がします。ファイターズに入団して挨拶した時、花巻東と星稜が練習試合で対戦したことを覚えてくれていた。僕は4打数4三振でしたけど。覚えてくれていたこと自体、本当に嬉しかった」
1年目、二軍でホームラン王に。
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森山は188cmの身長に甘いマスクで人気は高く、大谷と同じ左の長距離打者として二軍で活躍。ルーキーイヤーはイースタンリーグで18本塁打を放ち、本塁打王を獲得した。将来を期待される外野手として、1年目は一軍出場を5試合経験。しかし、2年目、3年目と一軍出場はなく、昨年10月に戦力外通告を言い渡された。
「球団から電話があり、『スーツで球団事務所に来てほしい』と言われました。そういうこと(戦力外通告)だろうと思いました。その時は次のことを考える余裕はありませんでした」
弱冠25歳での戦力外通告。たった3年のプロ生活。それは厳しい現実だった。
「最後のシーズンの後半ぐらいですかね、もうクビになるかもしれないと思い始めたのは。でも、その気持ちは誰にも言えませんでした。自分がいたのは試合に勝つための集団ですから、その環境で『自分はクビになるかもしれない』だとか『次の人生をどうすればいいのか』だなんて、とても周囲に相談できる空気ではありません。グラウンドでプレーする時はそんなことも忘れてしまうんですけど、グラウンドから離れるとまた不安と葛藤が襲ってきました」
生まれてから、気がつけば野球に没頭していた人生。やはり野球が好きで、野球で得る感動は格別だった。