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入団時の「優勝宣言」が現実に!?
AZ菅原由勢が狙う11年ぶり快挙。
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2020/03/28 08:00
試合にはまだコンスタントに出られていない菅原由勢だが、優勝を目前にしてチームの雰囲気は良いという。
「本気でチームが優勝を目指したいと」
3月1日、アムステルダムのヨハン・クライフ・アレナで行われた首都決戦。
屈強なウインガーのウサマ・イドリシとオランダ代表の新星FWマイロン・ボアドゥの2発でAZはアヤックスを撃破。そして1週間後のADO戦では、怯えたように5バック気味で引く相手を4-0で圧倒した。
その結果、順位は2位だが、勝ち点56で首位のアヤックスと並んだまま。AZは、2月9日のフェイエノールト戦が嵐の影響で延期となり、同じくアヤックスも試合中止で足踏み状態となって、競り合っている状況は続いている。
「本気でチームが優勝を目指したいと思っている気持ちがプレーに出ている。メンタル面にも出ていると思いますし、メンタル的なところで1つレベルが上がったのかなと思います」
今、AZはアヤックス顔負けのアタッキング・フットボールを展開している。
エリク・テンハーク監督が率いるチームほどに前線は流動的ではないが、ショートパスでポゼッションを高め、多彩なポジションチェンジを織り交ぜながら、イドリシと、それに並ぶ“オランイェ”の新星ケルビン・ステングスの両ウインガーを活かす[4-3-3]は実にオランダらしい。
もしかすると、90年代の初頭から半ばにかけて、ファン・ハールが率いて欧州を席巻したアヤックスの方に近いかもしれない。当時、“鬼才”は監督室に「偶然性を排除する、それが質が高いという意味だ」という標語を額装していたという。
現在のAZのスタイルは、まさにそのコピーが似合う。
「日本ではマリノスが去年やっていたと」
そんなシステマチックなサッカーの中に身を置くことで、菅原自身、磨かれる「能力」があるようだ。
「サイドバックが中に入ったりする戦術は、日本ではマリノスが去年やっていたと思いますけど、こっちでは当たり前のようになっていますし、実際に自分がやってみて、すごく面白いサッカーだなと思いました。
でも、結局それは僕らがベースとして置いているスタイルであって、去年の前半戦と今の僕らの試合を見てもらうと分かると思いますが、サイドバックの位置はサイドで張ってプレーすることも多くなっています。
戦術的なサッカーとはいえ、そもそも相手を見てやらないといけないスポーツ。なので、ベースがある上で、相手に合わせていく能力は培われていると思います」