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入団時の「優勝宣言」が現実に!?
AZ菅原由勢が狙う11年ぶり快挙。
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2020/03/28 08:00
試合にはまだコンスタントに出られていない菅原由勢だが、優勝を目前にしてチームの雰囲気は良いという。
AZはこれまで2回リーグ優勝している歴史が。
もちろんリーグ戦の3分の1も消化していない10月の時点で、今季の結末についてとやかく言うのは時期尚早。しかし、敵地でPSVに完勝して、アヤックスの背中が見える――「優勝」を狙うには悪くない位置だ。
過去、AZには「リーグ優勝の経験」が2度ある。最初の戴冠はおよそ40年前のこと。1981年、実業家のモレナー兄弟の支援を受けて、エールディビジを制覇しただけでなく、ヨーロッパリーグの前身であるUEFAカップの決勝進出も果たした。
そして2度目の戴冠はそれから28年後、2009年のことだ。当時の監督は、アヤックス、バルセロナ、オランダ代表を率いた経験のあったルイ・ファン・ハール。銀行家のオーナー、ディルク・スヘリンハの支援を受け、“鬼才”が指揮を執ったチームは4年掛かりで「リーグ優勝」に辿り着く。ファン・ハールによってアヤックス・サッカーの伝統を受け継いだAZは、ヨハン・クライフから賞賛されるまでになった。
“チーズの街”で知られるオランダ北部の小さな都市のクラブには、こうした「歴史」がある。そして今シーズンのAZは、その眠っていたDNAが覚醒したような戦いを繰り広げている。いわゆる“御三家”に対して、一歩も引かないどころか、全勝中なのだ。
首位アヤックスにホームとアウェイの両方で勝利。
新型コロナウイルスの影響によって3月7日のADO戦を最後にエールディビジが中断期間に入るまで、9月はフェイエノールト、冒頭に記したように10月はPSVにそれぞれアウェイで勝利。そしてアヤックスには12月、3月とホーム&アウェイで1-0、2-0と完勝した。オランダ随一のビッグクラブ相手に2連勝である。
中断前の最後の試合となったADO戦の後で、菅原が話すところによれば、この「アヤックスにホームとアウェイ、ダブルで勝ったこと」で、AZは本気で「優勝」を狙い始めたという。
「アヤックスは首位にいますし、オランダでは倒したいと飢えているチームしかいないと思います。そこに勝てたことで、僕らは1位と2位の直接対決でもあったので、なおさら自信が付いたと思いますね」