“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
1年生で正GKを奪った松原颯汰の今。
川口能活から「サイズが一緒だね」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/03/27 07:00
札幌・菅野ら小柄なGKのプレー映像集を見て研究しているというGK松原。「共通するのはスピード」と向上心たっぷりに語った。
大きかった先輩・猪瀬の存在。
高校1年の時は自分の技術を伸ばすことに必死だった。3年生にはFC琉球に入団した猪瀬康介がおり、激しいポジション争いを演じていたが、正GKの座をガッチリ掴んだ。もちろん、1つのポジションを争う真剣勝負の場、先輩とギクシャクする時期もあり、松原自身にも悩みはあった。
でもそこは猪瀬が大人だった。月日が経つにつれ、より後輩がプレーしやすい環境を作り出してくれた。練習では誰よりも努力する姿を見せて松原を引っ張り、試合では必ず声をかけて背中を押してくれた。
「自分のプレーに対してしっかりと課題などを指摘してくれるし、良かった時は誰よりも褒めてくれた。試合前には必ず肩を叩いて『頑張れよ』という言葉をくれ、それだけでどれだけ勇気をもらえたことか。康介さんのおかげで僕は練習でも試合でも自分の力を出すことに集中できました」
猪瀬が卒業すると「もう甘えられない環境になった」。2年生ではあるものの、選手権を経験した中心選手としての自覚を持って臨んだ。しかし、松原は怪我をしてチームを離脱してしまう。
気持ちが空回りしたインターハイ予選。
松原が不在の間、ゴールマウスを守ったのは1つ上の先輩である佐藤藍大だった。佐藤は192cmと圧倒的な高さを誇り、かつて柏レイソルでプレーした佐藤大を父に持つ実力者だった。
「最初は『怪我から復帰したらすぐに取り返そう』と思っていたのですが、佐藤さんが試合を積み重ねていくにつれて、良さがどんどん増していって、周りからの信頼も厚くなっていくのがわかった。やばい、と危機感を覚えました」
怪我から復帰直後の5月、プレミアリーグEASTの大宮アルディージャユース戦に松原はスタメン出場した。だが、そこで2失点を喫して0-2の敗戦。続く鹿島アントラーズユース戦でも1失点し、1-1のドロー。どちらもチームを勝利に導けなかった。
インターハイ予選が始まる頃、松原はU-17日本代表のアルゼンチン遠征メンバーに選出された。ただ、そのせいで予選準決勝まで出場することができなかった。決勝まで駒を進めたチームに貢献したのは、守護神として君臨した佐藤だった。
日体大柏とのインターハイ決勝。その2日前にアルゼンチンから帰国した松原は、スタメン出場を果たす。だが、気持ちが空回りした。
2点を先行する幸先の良いスタートを切った流経大柏だったが、前半のうちに1点を返されると、後半17分に同点。1度は勝ち越すも、後半アディショナルタイムにPKを献上、試合は3-3で延長戦に。そしてPK戦決着すらよぎった延長後半アディショナルタイム。ゴール前の混戦から押し込まれ、痛恨の逆転弾。流経大柏は3-4でインターハイ出場を逃してしまった。
「期待されて出場したのに4失点。もう情けなかった。佐藤さんにも、チームにも申し訳なかったし、周りの期待すべてを自分が壊した。冷静でいられるはずがなかった」