“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
1年生で正GKを奪った松原颯汰の今。
川口能活から「サイズが一緒だね」
posted2020/03/27 07:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
180cmのGK――。フィールドプレーヤーであれば、日本ではまだ“大きい”と捉えられるかもしれない。しかし、GKというポジションとなれば、話は別だ。世界を見ても190cmオーバーのGKが当たり前のように活躍し、180cm前後は“小柄”という捉えられ方すらされてしまう。
だが、小柄だからといって通用しないとも限らないのがサッカーのおもしろい部分かもしれない。事実、Jリーグの舞台でも活躍する小さなGKは存在する。菅野孝憲(179cm/北海道コンサドーレ札幌)、朴一圭(180cm/横浜F・マリノス)、秋元陽太(182cm/町田ゼルビア)、飯倉大樹(181cm/ヴィッセル神戸)……彼らに共通することは、自分が小さいという事実を受け入れ、スピード、ポジショニング、コーチング、足元の技術と、いかに自分の優れた点を磨き上げきたかということだろう。
今回のコラムで描くのは、高校2年生のGK松原颯汰の物語である。彼もまた179cmと、小柄なGKのうちの1人である。
1年生で流経大柏の守護神に。
「大阪からどえらいGKが来るらしいぞ」
2018年春、流通経済大柏高サッカー部では、RIP ACEジュニアユース(大阪)からやってくる新入生のことが噂になっていた。俊敏性に優れ、ステップ、判断のスピードが速く、セービングセンスもずば抜けている。そんな高い評価を受けていた松原は、入学前の3月、サニックス杯国際ユース大会で早々にデビュー。全国屈指の強豪校の中で、いきなりポテンシャルの高さを見せつけた。
そして、1年からレギュラーに君臨すると、2018年度の高校選手権で準優勝に貢献。その後も不動の守護神としてプレーした彼は、今年に入って日本高校選抜に選ばれた。さらに、ジェフユナイテッド千葉と湘南ベルマーレの練習に参加。プロ注目のGKとして、高校最後の1年を迎えようとしている。
「今は(高円宮杯U-18)プレミアリーグ開幕に向けて、参考になるGKの映像を見たり、自分がどういうプレーをしたいか、どう成長していきたいか、しっかりと向き合う時期だと思っています」
松原は落ち着いた表情で心境を語り始めた。Jクラブの練習参加を経て、そこで得た課題の解消に努めている。ただ、確かな手応えを感じている一方で、昨年のことに話が及ぶと表情は曇った。
「昨年は……何かがおかしかった。自分でも心と体がマッチしない部分がありました。1年生で選手権準優勝を経験したことで、ずっと注目されているのを感じていました。周りから納得されるようなプレーヤーになりたい、『松原はやっぱりすごい』と思われるなりたい思うがあまり、自分の動きが硬くなるというか、本来の自分でなくなっていく感覚でした」