マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
部活という日常を生きる高校生たち。
「野球がないと行くとこなくて」
posted2020/03/26 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
練習している高校をやっと見つけた! という連絡をもらって、連絡をくれた人と連れ立って、そのグラウンドにおじゃまさせていただいた。
そこの監督さんが旧知の方で、電話でお伺いを立てたら、「特別に……ですよ」と笑って了解をくださった。
こうしたご時世ではあるが、その地区では「春の県大会」はまだ中止になっていない。そこに備えるために、“任意”の短縮時間練習なら……。
その線で、学校からも許可をいただいての「練習」だという。
ケガをしていたり、痛みを抱えている生徒さんは、その治療を優先することとして、1日4時間ほど。
「学校はずっと休校ですから、ほんとは倍ぐらいやりたいところですけどねぇ」
それでも、グラウンドで存分に野球が出来るだけでありがたいと、そう言った時は、真顔になっていた。
見慣れたグラウンド風景が……。
私自身、2月の初めに、雑誌の取材で高知高校のグラウンドに伺って以来の、「高校野球」の現場になった。
快晴、弱い北風、ここ2、3日の暖かさで一気に開花した桜の下で、これ以上ない練習日和。
広いグラウンドに選手たちが散らばって、バットを振り、ボールを追いかけ、ダイヤモンドを駆け回る。普通なら、なんの変哲もない見慣れたグラウンド風景が、どうして今日はこんなに染みるのか。
40人ほどの部員が、集合がかかっても“円陣”にはならない。横一列に並んで、密集を避ける。やはり、それなりの気遣いはなされている。