熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
本田圭佑ブラジル初戦を現地取材。
メッシ的な自在さ、健在の勝負強さ。
posted2020/03/18 12:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
ZUMA Press/AFLO
地元メディアとファンの熱い期待に十分に応える、見事なデビューだった。
これまでの経緯から、悪くないプレーをするだろうとは思っていた。その一方で、驚きもあった。公式戦で初めて一緒にプレーしたチームメイトとの関係性だ。
試合開始早々、自分を「攻撃の中心」と認識させ、ピッチを動き回って、ボールを集め続けた。ゴールはその結果であり、さらにもう2点取れていた可能性があった――。
3月15日午後4時(日本時間では16日午前4時)、ボタフォゴの本拠地ニウトン・サントス・スタジアムで、リオ州選手権第3節のバングー戦が行なわれた。
この時期のリオは晩夏だが、それでも試合開始時の気温が摂氏36度、湿度が63%。東京の真夏日かそれ以上の蒸し暑さだった。
マスクをつけて空のスタジアムに。
ボタフォゴ選手全員が、白いマスクを付けて入場する。本田圭佑は最後尾。左足でサイドラインを踏み、左手で芝生に触れた。
2月7日のブラジル到着以来、地元メディアとファンはこの男のプレーを心待ちにしていた。
本来なら、スタンドを埋めた地元観衆から大歓声が巻き起こるところ。しかしブラジルでも新型コロナウイルスの感染が急速に進行し、3月14日、リオ州サッカー連盟はこの週末の州選手権の試合を無観客で行なうことを決定。4万8000人を収容する巨大なスタンドは空っぽだった。
選手たちがマスクを着用したのは、危険な状況にありながら試合が強行されたことへの抗議の意思表示だった。無人のスタンドとテレビカメラに向かって、「コロナウイルスを予防しよう。これは我々全員の闘いだ」という横断幕を掲げた。