熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
本田圭佑ブラジル初戦を現地取材。
メッシ的な自在さ、健在の勝負強さ。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byZUMA Press/AFLO
posted2020/03/18 12:00
自らが名乗り出たPKでキッカーを務め、見事に初ゴール。無観客試合でも本田圭佑らしさは全開だった。
当初の2列目右サイドから……。
ボタフォゴのフォーメーションは、4-2-3-1。当初、本田は2列目右サイドにおり、トップ下は25歳のMFブルーノ・ナザリオだった。
しかし前半5分頃から、本田とナザリオがポジションを入れ替える。
6分、本田が中盤やや右の位置でパスを受けるとドリブルで中へ切れ込む。相手守備陣がバランスを崩すのを見て、左斜め前へ絶妙のスルーパス。FWルイス・エンリケが右足でシュートを放ったが、相手GKのファインセーブに阻まれた。
テクニックと判断力をいかんなく発揮したこのプレーで、本田はチームメイトの信頼を勝ち取った。
メッシのように自在に動き回り。
その後はまるでメッシのように最終ラインの手前からトップまでピッチを自在に動き回り、味方からパスを引き出す。
マークが付いているときはすぐに叩いてボールを受け直し、少し余裕があると体の向きを変えて逆サイドへ長いパスを送り、スルーパスを捻りだし、自らドリブルで仕掛ける……(後でテレビ中継の録画を見たら、アナウンサーが本田のことを「チームのオーナー」と呼んでいた。「チームの王様」に近い意味だ)。
前半27分、ボタフォゴのCFラファエル・ナバーロがペナルティエリア内へ進入したところで相手GKに倒された。判定はPK。
ナバーロは自分で蹴りたそうな様子だったが、パウロ・アウトゥオリ監督は公式戦のピッチに立って30分足らずの本田をキッカーに指名。背番号4は、向かって右に蹴ると見せかけて相手GKを動かしておいてから、左足インサイドでゴール左隅へ蹴り込んだ。
両手の拳を握りしめてガッツポーズを作った本田に、チームメイトが飛びついて喜びを分かち合う。
本田はPKを奪ったナバーロを探して肩を組み、ゴール裏のテレビカメラへ向かって「こいつが取ったPKだ」と言わんばかりに彼を指差した。すると、ナバーロも「この男のゴールだ」とばかりに本田を指し示す。
新加入の日本人選手がすでにチームに馴染んでいることを示す光景だった。