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米バスケ名門大で注目の今野紀花。
語学の壁を越え、その先の領域へ。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byYoko Miyaji
posted2020/03/23 07:00
NCAA屈指の名門ルイビル大でルーキーイヤーながらコーチの評価が高い今野紀花。大学4年間での活躍に期待したい。
単なる言葉のコミュニケーション以上の理解を。
もっとも、今野に言わせるとまだうまくいかないことだらけなのだという。
英語は当初よりだいぶ理解できるようになった。それでも、まだルイビル大ヘッドコーチのジェフ・ウォルツのバスケットボールを完璧に理解できるほどではないと明かす。英語でのやり取りも慣れてきたとはいえ、まだ自分が言いたいことを完全に伝えることができず、後から振り返ってフラストレーションを感じることも度々だという。
「コーチが言っていることを、最初のほうは『聞けているかも』と思っていたんですけれど、うまくプレーできないなって感じ始めてからは、やっぱり理解できていないなって気づいて。途中まで、それに気づいていなかったんですよ」と、シーズン序盤のことを振り返る。
つまり、今野がやろうとしているのは、単にコーチの言葉を聞き取ることではなく、言葉を通して、コーチがやろうとしているバスケットボールを理解することだったのだ。
今野の秘密兵器は「ノート」。
英語が母国語の選手にとっても、決して簡単なことではない。チームのスタッフからも「コーチ・ウォルツは話すのが速いし、頭がいいし、いくら英語がわかっている人でも、1年からやりたいバスケを理解するのは難しいよ」と言われたという。そう言われても、安心したり現状に満足するわけではないのは、自身でも“完璧主義”と認める今野らしいところだ。
「コーチのバスケを理解したかったら、言っていることをちゃんと理解しないと、コート上でも目的をもってプレーできない。こういう考えでやっているんだなっていうのを知りながら、バスケしたい。そのほうがもっと面白いと思うので」と、意欲的だ。
そこで、理解するための秘密兵器を用意した。ノートだ。1月半ばに膝の故障で試合に出られなくなったこともあり、その間に少しでも理解を深めようとメモを取ることにしたのだ。
実際、試合中の今野は、試合を見ながら、熱心にノートに何やら書きこんでいる。
これには、ウォルツ・コーチも「彼女は本当にバスケットボールを学び、知りたいと思っている」と感心した。