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米バスケ名門大で注目の今野紀花。
語学の壁を越え、その先の領域へ。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byYoko Miyaji
posted2020/03/23 07:00
NCAA屈指の名門ルイビル大でルーキーイヤーながらコーチの評価が高い今野紀花。大学4年間での活躍に期待したい。
「コーチとの関係や距離感が違うんですよ」
今野にインタビューしている途中で、コーチ・ウォルツが満面笑顔で横を通りかかった。
「彼女はアメリカでは僕の娘。うちの長女なんだよ。彼女から日本語を習っているんだけど、『あまりうまくない』と言われてしまうんだ」と笑う。アメリカのコーチに多い、気さくで熱血漢なタイプのコーチだ。
試合や練習中は厳しくても、いったんコートを離れると選手たちとジョークを言い合い、まるで、友達か家族のようだ。最初は今野も、日本ではなかったようなコーチとの近さにも戸惑ったという。
「コーチとの関係や距離感が違うんですよ。それも自分の中で難しくて。家族みたいになるんで。親みたいに、(選手との間の壁を)突き破って自分の中に入ってくるんですよ。高校のときは、いい意味でも悪い意味でも、コーチとあんまり喋らなくてもよくて、ある程度の距離感があったけれど、こっちは、つらいのがすぐにバレるし、顔に出たらバレるし、呼ばれるし。話させられるし。選手がふざけていじっても、コーチは笑っている。信頼関係ができているからこそなんですけれど。
最初は躊躇というか、引いてしまったんですけれど、今はパパ。本当に尊敬しています」
評価された、バスケットボールIQが高いところ。
そんなコーチ・ウォルツの今野に対する評価はかなり高い。ルイビル大は、全米ランキングでも現在6位という強豪校。当然、入ってくる選手たちは選りすぐられた精鋭ばかりだ。そのなかで、今野は、故障離脱するまで1年生ながらに試合に出て、ローテーション入りしていた。
「ノリカがこっちに来て練習するようになってすぐ、これなら試合で使えるとわかった。3オン3とか、色々なドリルをやっていたときに、よくフロアを見ることができていた。次のパスがどこに行くべきなのかがわかっていた。それには、とても感心した」とウォルツ・コーチ。
その前に映像で見ていたときから感じていたボールのハンドリング能力や、シュート力。そして、何よりバスケットボールIQが高いところは、今後に向けて何よりも楽しみなところだと言う。
シーズンが開幕してからも、その実力を再確認したことがいくつかあった。そのひとつが開幕して約1カ月の11月30日に、当時全米ランキング1位だったオレゴン大と対戦した試合だ。今野は控えから17分出場し、6得点、2アシストをあげてチームに貢献。全米ナンバーワン選手の呼び声も高いサブリナ・ユネスクともマッチアップしている。
「あの試合でのプレーを見て、彼女がNCAAの最高峰のレベルでもできるとわかった」とコーチ・ウォルツは振り返る。
今野に、サブリナ・ユネスクとマッチアップした感想を聞くと、意外な答えが返ってきた。
「正直言うと、日本人のほうがつきにくいなって思ったんですよ」