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西田有志のサービスエースの裏に。
ジェイテクト悲願のVリーグ初優勝。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byV.LEAGUE
posted2020/03/02 20:00
無観客試合で行われたV1リーグ男子ファイナルは、西田有志擁するジェイテクトがフルセットの激戦を制した。
敵も恐れる西田のサービスエース。
袴谷の3本目のサーブは、パナソニックがクビアクのスパイクで切り、20-19と再びリードしたが、ジェイテクトもすぐに取り返し20-20。
その20点目を決めるべく、セッターの中根聡太が選択したのはオポジットの西田。2枚ブロックを物ともせず、ライト側からスパイクを叩きつけると、西田がサーブに向かう。
おそらく多くの観衆がいたならば、誰もが同じことを思っただろう。
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この場面で、西田がサービスエースを決めるのではないか。
何しろ、昨秋のワールドカップ最終戦で見せた、あの鮮やかな連続サービスエースの残像が今も色濃くこびりついている。すべてのチームにとって「脅威」と言っても過言ではない西田のサーブ。多くの選手が口にしてきたその凄さを、深津が代弁する。
「ワールドカップで世界一のサーバーだと証明された西田選手を我々は国内で相手にしています。もちろん返すために練習をしているし、返せればいいですが、世界一のサーブを返すにはリスクを負って、コースを絞ってレシーブしないといけない。(西田選手は)そういった中でもサービスエースを決めて来たし、いいサーブを打ち続けてきた選手だと思います」
会心の一打は“狙い通り”。
世界一のサーバーは、この勝負所でどんなサーブを打つのか。
誰しもが期待を高めたその場面で、西田の放ったサーブはクビアクを弾き飛ばし、サービスエース。
まさに、狙い通り。
それは、拳を握り何度も雄たけびをあげた西田以上に、セッターの中根にとっても、その1本はまさに会心の一打だった。
西田とカジースキ、リーグの中でも最強の2人と言っても過言ではないビッグサーバーのサーブが続くローテーション。ここでサーブが走れば大きな武器になるが、相手からすればいかにサーブを打つ前にプレッシャーを与えられるか。サーブではカジースキを狙ってプレッシャーをかけ、西田へのブロック、レシーブでのマークを厚くする。
事実、レギュラーラウンドでパナソニックが勝利した2戦は、パナソニックがサーブ戦術からのディフェンスで術中にはめ込む形でストレート勝ちを収めた。
相手が潰そうとするならば、その武器をいかに発揮させられるか。ビッグサーバーを活かすべく、中根はレギュラーラウンドから西田のサーブ力をより発揮させるべく、密かに策を打っていた。