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西田有志のサービスエースの裏に。
ジェイテクト悲願のVリーグ初優勝。
posted2020/03/02 20:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
V.LEAGUE
サーブへの踏み込みや、スパイクに入るたび、キュキュッ、と床を蹴る靴の音。
時には相手チームの攻撃を想定して「Bクイック、ターン!」と叫び、また別の時にはブロックで対峙する選手の名を呼び、劣勢時に響く「まだ終わりじゃねーだろ!」の声。
光と音を駆使し、趣向を凝らした派手な演出は1つもない。だが、それでも確実に伝わるコートから溢れんばかりの熱。
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ただ違うのは、そこに、その背を押すような声援を送るファンやサポーターがいないことだけ。
2月29日、Vリーグ男子決勝。無観客の中で行われた試合は、フルセットの末にジェイテクトSTINGSが勝利し、初優勝を決めた。
無観客試合となったファイナル。
両チームの監督、選手にとって未体験の無観客試合。
パナソニック・パンサーズの川村慎二監督が「いろんな形で難しい決勝戦だった」と振り返ったように、独特の空気の中で始まった試合の主導権を先に握ったのはパナソニックだ。
攻守の要であるジェイテクトのマテイ・カジースキの攻撃参加を封じるべく、パナソニックのセッターで主将の深津英臣が徹底してサーブで狙って崩し、第1セットはパナソニックが先取。しかし第2セットは金丸晃大のジャンプフローターサーブが効果を発したジェイテクトが奪取。
試合が動いたのは第3セットだった。
19-17とリードするパナソニックに対し、ジェイテクトは1つローテーションを回せばサーバーは西田。2点の点差ならば十分に引っくり返せる。そんな重要な場面で、ジェイテクトはリリーフサーバーの袴谷亮介を投入した。
パナソニック・深津の声が響く。
「(袴谷の)サーブいいぞ、ここ集中!」
対角線に打ったサーブは、コート右のコーナーギリギリに跳び、レシーブの名手でもあるミハウ・クビアクも触るのがやっと、という素晴らしいコースに決まり、ジェイテクトが19-18と1点差まで追い上げた。続いてパナソニックのエース・清水邦広のレフトからのスパイクをミドルブロッカーのラオ・シュハンが止め19-19、遂にジェイテクトが同点に追いついた。