“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2新潟移籍GK小島亨介が見せた質。
大分での成長をJ1昇格、東京五輪に。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/02/26 08:00
開幕戦の完封勝利に貢献した新潟GK小島。東京五輪も見据えながらも、まずはレギュラー定着とJ1昇格に照準を当てている。
風上に立つとビルドアップに参加。
彼のところにまったくボールが飛んでこなかったわけではなかった。群馬も風上のアドバンテージを活かすべく、裏のスペースにボールを送り込むが、そのボールに対し小島はペナルティーエリアをフルに動いてボールを正確にキャッチ。特に目の前でショートバウンドする難しいボールに対しても、ボールの軌道と回転をしっかりと見極めて両手で吸収するようにキャッチ。相手に付け入る隙を与えなかった。
後半に入って風上に立つと、今度は積極的にビルドアップに関わった。
1-0のリードで迎えた85分、右CBマウロからのバックパスを受けた小島は、一度大きく蹴り出そうとするも、左サイドバックの堀米悠斗がフリーになっていることを確認すると、中盤で数的優位を保った状況も見越してパスに切り替えた。
小島の狙い通り、堀米は中盤のシルビーニョに縦パスを出すと、そのままインサイドスペースに駆け上がり、リターンパスを受けた。堀米のスルーパスに抜け出したFWファビオのクロスからMFロメロ・フランクの追加点が生まれたのだ。このゴールで試合を決定づけた新潟はもう1点を追加し、3-0で開幕戦を白星を飾った。
「自分で言うのも何ですが、キャンプの段階で『冴えている』印象を持っていたんです。ボールの軌道や回転も凄くしっかりと見えるし、ビルドアップ時の味方の動き、相手の動きがしっかりと見える。そこは手応えがありましたし、今日の試合もトレーニングでの平常心のままできました」
代表選出も、大分では出番に恵まれず。
覚悟の決断だった。小島は昨年、東京五輪代表候補GKとして早稲田大から大分トリニータに入団。コパ・アメリカやE-1選手権でA代表に選出されるも、チームでは守護神・高木駿の牙城を崩せず、リーグ戦出場はゼロ。ルヴァンカップ2試合のみの出場に留まり、今季からJ2新潟への期限付き移籍を決めた。
さらに今季は東京五輪イヤー。守護神の最有力と目されているGK大迫敬介は、昨季からJ1サンフレッチェ広島でレギュラーの座を得ており、ハイレベルな環境で経験を積んでいる。小島にとって試合に出られないことは、東京五輪出場にも黄色信号が灯ることになる。
「なかなか難しい決断でした。厳しいことを言ってしまえば、カテゴリーは1つ下がることになりますが、僕は試合に出たい気持ちが強かった。1年間トリニータでプレーをして、課題と成長の両方をリアルに感じることができたんです。できないことがはっきりして、意欲的に取り組み、成長を毎日実感することができた。だからこそ、その成長した部分を新しいチームで体現したいと思ったんです。今年はトリニータで得たものと手応えを実戦で披露して、経験を積んで成長していく時期。そう思って、移籍を決断しました」