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J2新潟移籍GK小島亨介が見せた質。
大分での成長をJ1昇格、東京五輪に。
posted2020/02/26 08:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「シュートが飛んでこなかったですから、僕は何もしていませんよ」
J2開幕戦ザスパクサツ群馬vs.アルビレックス新潟。今季、新潟に加入したGK小島亨介は、3-0の完封勝利に貢献した試合後のミックスゾーンでこう語った。
だが、それはあくまで照れ隠しの言葉に聞こえた。
彼はこの試合「ゾーン」に入っていた。それを実感したのが試合中の彼の「目の動き」である。彼をコラムで描くことを決めていた筆者は、前半、ゴールキックエリアにカメラの狙いを定めた。
この日、正田醤油スタジアムは特有の強烈な風に見舞われた。群馬県民にはお馴染みかもしれないが、これには県外から来るといつも驚かされる。スポンサー看板が伏せられているが、これは試合前に強風で飛ばされしまうことを防ぐのが狙いだ。
新潟は前半、風下に立った。自分に向かって強烈に吹きつけてくる風に対し、小島は何度もDFラインとの距離感やボールの動きに目をやって、自分の立ち位置を細かく修正した。
「(DFラインの)背後のケアの部分で、前半のように向かい風であれば、ボールが伸びてくる。一方で後半のように追い風であれば背後のボールは止まったり、戻ったりする。そこは判断材料に入れながら意識してプレーしました」
コンディション、天候を頭に入れて。
これだけ明らかな気候条件であれば、選手として意識するのは当然である。だが、彼がゾーンに入っていることを感じさせたのはここからだった。
「新潟のチームコンセプトは前からハメていくサッカー。攻撃的なときは後ろをコンパクトにしてハイラインにする。そうなると当然、GKがDFラインの背後のケアをする。今日で言えば、ピッチにかなり水が撒かれていたスリッピーな状態だった。ボールが伸びる部分があったので、アップの段階である程度、ピッチコンディションと風、そしてボールの動きを確認していました。
それに今日のこの日差しの強さならピッチが途中乾いてくるな、ボールがより止まるなと感じたので、試合前にDFの選手と話をして『任せるところは任せるから』と伝えていました。想定どおりボールが止まるシーンも増えてきたので、DFに託せるようにDFラインを若干低くしました。新潟は歓声が凄くて指示が試合中に伝わりきらない部分もあるので、事前に予測して伝えておいたことで、スムーズに対応できたと思います」