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今の神戸は、良くない試合でも勝つ。
酒井高徳「こういう戦い方がある」 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byAFLO

posted2020/02/20 11:50

今の神戸は、良くない試合でも勝つ。酒井高徳「こういう戦い方がある」<Number Web> photograph by AFLO

終了間際の古橋亨梧のゴールで水原に勝利したヴィッセル神戸。後ろで喜びを爆発させる酒井高徳のジャンプも美しい。

勝負を分けるのは結局ダッシュ?

 もちろん、ホームの水原にとっては、勝ち点3を手にしたいところだろう。しかし、勝ち点を失う危険を冒してまで、勝ちに行く様子は見られなかった。自陣でボールを奪った時はカウンターを仕掛けていたものの、攻撃に人数を割くわけでもない。

 80分以降に2度のカウンターのチャンスがあったが、それも酒井が猛ダッシュで自陣へ戻って奪い返したり、身体を投げ出しシュートブロックしたりとピンチを救った。

「僕自身は0-0でいいと思っていた。相手が前半コンパクトにカウンターを狙うというのを徹底し、それが脅威だとわかっていたので、こっちがやられてしまう可能性もあるなかで、時間を使いながらサッカーをし、前半を0-0で折り返したら、後半は自分たちも攻めるけど、基本的には、ゼロで抑えるということが一番のベースだった。

 僕の勝手な考え方ですけど、結局勝負の細かいところは、(カウンター攻撃を受けたときに)ダッシュで戻るか、戻らないか、だと思うんですよね。ダッシュで戻れるかで、90分間に生まれるチャンスをひとつ抑えられる。それを何個抑えるかが、失点ゼロに繋がると思うから。僕の役割は守備。どんな形でも全力で戻り、しっかり対応するのは、自分の最低限の仕事だから」

その酒井が、前に向かって走った。

 しかし時計の針が89分に差し掛かったとき、イニエスタがボールを持ったのを見た酒井は、相手の数を確認して大きなリスクにはならないと判断してから「パスが出てくると信じて走った」という。そして放ったクロスが決勝弾となった。

「クロスを上げるときは、特には考えず、中に誰かいるだろうという感じで上げただけ。クロスもドウグラスがニアでつぶれてくれてから、亨梧にボールが渡った。みんながみんな、自分の動きをして、決まったゴールだと思うので、みんなのゴールかなと思います」

 ゴールが決まった直後に、アディショナルタイム2分のアナウンス。水原にとっては、0-0で逃げ切れると一息つく、そんな瞬間の失点だったに違いない。

【次ページ】 「神戸は1点穫れるチーム」

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