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今の神戸は、良くない試合でも勝つ。
酒井高徳「こういう戦い方がある」
posted2020/02/20 11:50
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
AFLO
試合終了の笛が鳴った瞬間、2分前に決勝ゴールを決めた古橋亨梧は自陣に向かい、両手を高く上げ、拳を握りしめ、声をあげた。両ひざをつくその姿からは、この試合の苦闘が伝わってくる。
そんな古橋と同じようにガッツポーズをし、膝をついたのは酒井高徳だった。古橋のゴールをアシストしている。すぐさま2人は歩み寄り、言葉を交わした。
「『言った通りだろ、1点獲れればそれでいいんだから』って言いました。相手は低い位置でブロックを作り、なかなか崩れてくれず、僕らもそれを崩す形が見いだせなかった。だから、80分くらいに『獲られてもいいから、1対1で仕掛けていいよ。そうやってはがさないと崩れないから』と亨梧に言ったんです。
そうやって、良くないながらも、勝ちを引き寄せるというか、チャンスを待つというのを意思疎通しながら、2人で共有していたので。思っていた通りに、試合が進んでくれてよかった」と酒井が語った。
神戸には勢いがあった。
2月19日韓国・水原ワールドカップスタジアムで行われたACLグループリーグ第2節。イニエスタへの注目度が高く、韓国のACLでは珍しく1万7000人をこえる観客が詰めかけた。
ホームの水原は、第1節が延期となり、Kリーグも2月下旬開幕のため、今季初の公式戦。かたや神戸は、2月8日の富士ゼロックススーパーカップ、そして、ACL第1節と今季3試合目だ。疲労度への不安もあったが、それ以上にチームに勢いがある。
そんな神戸を警戒しているのだろう。水原の3-4-2-1のシステムは5バックとなり、低い位置にブロックを引き、神戸の攻撃を防ぐ。「相手のシステムに合わせた」というフィンク監督率いる神戸は4-3-3の布陣で挑んだが、思うような攻撃を展開できない。