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ムーキー・ベッツとドジャース。
大型トレードのもたらした波紋。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2020/02/15 09:00
2月12日、デビッド・プライス(左)とともにドジャース入団の記者会見に臨むムーキー・ベッツ。
「贅沢税回避」という大きな課題。
だが、レッドソックスには「贅沢税回避」という大きな課題がある。そのためには、2020年の年俸総額を2億1000万ドル以内に抑えなければならない。
さらにいうと、ムーキー・ベッツ(20年は2700万ドルの1年契約を結んでいた)は球団最高のプレイヤーだが、2020年シーズン終了後にFAの資格を得る。FAになれば、マイク・トラウトに迫る10年総額4億ドル程度の相場になるだろう。
レッドソックスには、それがきびしい。
'18年こそワールドシリーズを制したものの、'19年は、ア・リーグ東地区首位のヤンキースに19ゲーム、2位のレイズに12ゲーム差をつけられるというていたらくだった。のみならず、サイン盗みの疑惑に絡んで、監督のアレックス・コーラも解任されている。
いわば泣きっ面に蜂の状態で、年俸の高い選手をできるだけ減らし、若手でチームを再建したいというのが正直なところだろう。
'18年は首位打者、得点王でMVPに。
ベッツ放出の裏には、レッドソックス側にこういう事情がある。ファンにしてみればたまったものではないが、戦力的に見て釣り合いの取れないトレードを強行してでも、財布の紐を引き締めたいのだ。
一方、冬の移籍市場でゲリット・コールやアンソニー・レンドンを獲り損なったドジャースも、喉から手が出るほどベッツが欲しい。
いうまでもなく、ベッツの価値は高い。
175センチ/81キロと小柄だが、大リーグに昇格した2014年から'19年までの6年間で、オールスターに4度出場。'18年には首位打者(3割4分6厘)と得点王(129)を獲得し、MVPに輝いた。
この年の彼(25歳)は、32本塁打/30盗塁。OPSが1.078でWAR(詳細を省いていうと、勝利貢献度指数。大きいほど価値が高い)が10.9だった。壮観ではないか。