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サイン盗みに泣いたドジャースの、
ベッツ獲得トレードに見る本気。
posted2020/02/16 11:40
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
キャンプインを目前に控えるメジャー球界で、複数球団による大型トレードが成立した。
紆余曲折を経た複雑な交渉で、中心となって積極的に動いたのが、悲願の世界一を目指すドジャースだった。
当初は、レッドソックス、ツインズとの三角トレードが大筋で合意したはずだった。ところが、レッドソックスが交換要員としていたツインズの若手快速右腕ブラスダー・グラテオル投手の故障歴から先発としての評価に難色を示したことで、合意から一転、再交渉を余儀なくされる事態となった。
その後、膠着状態となったこともあり、MLB選手会が早期決着を求めて異例の声明文を発表するなど、数日間は不透明な状況が続いた。
それでも、ドジャースは、2018年MVPでもあるレッドソックスのムーキー・ベッツ外野手獲得への執念を捨てることなく、両球団との折衝を続けた。
昨季、メジャー最多の135得点をマークした屈指のリードオフマンこそ、ドジャースが最も必要とするパズルのピースだった。今オフ、FA(フリーエージェント)となるリスクを承知しながらも、そう簡単にあきらめるわけにはいかなかった。
前田と有望株を放出してまでも。
すかさず、ドジャースはトレードの形をアレンジする案を進めた。三角トレードが破綻となったことで、それぞれの球団と別ルートで交渉するプランを推し進めた。
その結果、一時は、今回のトレードから除外される情報も飛び交ったツインズへ前田健太投手と若手捕手、1000万ドル(約11億円)を譲渡し、健康面での懸念を指摘されたグラテオルと若手外野手、今季のドラフト全体67位指名権などを得ることで、まずは外堀を埋めた。
その一方で、レッドソックスからベッツ、2012年サイ・ヤング賞左腕デビッド・プライス投手を獲得。レッドソックスには、アレックス・バードゥーゴ外野手、ジーター・ダウンス内野手、コーナー・ウォン捕手が移籍する話をまとめた。
プライスの残り3年契約・9600万ドル(約105億円)の半分はレッドソックスが負担するとはいえ、ベッツの年俸2700万ドル(約30億円)を含め、総額約72億円もの負担を背負い、さらに前田のほか、複数の若手有望株を放出してまで大補強した理由が、今季の世界一奪取であることは、もはや言うまでもない。