酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
沖縄と宮崎キャンプそれぞれの長所。
気候差があるからこその違いとは。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2020/02/01 08:00
2019年、ソフトバンクの宮崎キャンプでのひとコマ。沖縄より多少気温が低い宮崎だが、厳しいメニューをこなせば汗をかくわけで……。
宮崎キャンプの球団に聞いてみた。
一軍キャンプ地の数の上では、宮崎県が5球団、沖縄県が9球団(巨人と広島は宮崎、沖縄両方で実施)と沖縄が多いが、ポストシーズン進出球団では、宮崎の方がやや優勢なのだ。
これは偶然か、それとも何か理由があるのか?
宮崎で春季キャンプを行っている球団の運営担当者に話を聞いてみると、こう教えてもらったことがある。
「確かに沖縄は温暖でいいですが、プロ野球は3月に始まります。この時期の内地は沖縄よりもかなり寒い。オープン戦は南から徐々に北上しますが、それでも沖縄でキャンプする球団では内地と沖縄の気候差で、選手が体調を崩すことが少なくないと聞きます。
宮崎はキャンプ中に雪が舞ったりしますが、本拠地の気候と大差ないので、自然に体も実戦モードに近づけていくことができるんです」
なるほど、と思った。
とは言え、沖縄の暖かさは魅力だ。選手の仕上がりが早く、内地との気候の落差に気を付けさえすれば、沖縄でやるほうがメリットがあるという見方もできよう。
「タイムテーブル」に大きな違い。
沖縄と宮崎のキャンプの違いをはっきり感じるのが「タイムテーブル」だ。
宮崎のキャンプでは、選手はじっくりと体をほぐしていく。ざっくりした印象で言うと、朝11時くらいまで選手がグローブやバットを手にすることは少ない。アップやランニングの時間をたっぷりとって体が温まってから「野球」をするという印象だ。
投手がブルペンに入るのは、昼近くになってから。宮崎でも暖かい日は多く、オリックスのキャンプなどは球場周辺の緋寒桜が満開になるが、気候によっては大雪なんて日もある。そのため宮崎では、チームも選手も慎重に調整を進めていく印象である。
一方、沖縄では、早ければ10時前にアップを終えて投内連係、シートノックなどが始まる。昼前にはブルペンから「よっしゃー!」とブルペン捕手の景気の良い声が聞こえてくることも多い。
さらに早いのがロッテの石垣島だ。空港からタクシーに乗ると、2月でもエアコンがかかっていたりする。沖縄本島から着込んできた薄いダウンジャケットが間抜けに見える。
石垣島のロッテキャンプのブルペンでは、10時前から投手が投げ込みを始めたりする。午後になると汗ばむ陽気で、Tシャツに短パンのファンの姿も目にする。