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内藤哲也vs.KENTA「最後の2冠戦」。
王者の防衛計画と失敗した男の企み。
posted2020/01/28 20:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
これは内藤哲也にはちょっと気の毒な話に思える。そしてKENTAにはうま過ぎる話だ。どうしてこんなことになったのかはよくわからない……。
でも、2月9日に大阪城ホールで行われるメインイベントはIWGPヘビー級とIWGPインターコンチネンタルの2冠王者内藤の2つのタイトルにKENTAが挑戦することに決まっている。
内藤は1月5日の東京ドームでインターコンチネンタル王者として、IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカを下して、公約通り2冠王者となったが、楽しみにしていたファンとの「デ・ハポン」の大合唱はKENTAの襲撃によって阻止されて、6日の大田区総合体育館でもKENTAにいいようにあしらわれてしまった。
「大逆転での2冠獲得も偶然ではなくデスティーノ(運命)、大合唱を阻止されたのもデスティーノなのかもしれない」
内藤はこうあっさりと言ってのけ、この運命に身を任せるつもりのようだ。
「これは1選手としてみた場合はすごいことだと思う」
内藤はKENTAと「戦ってもいい」と新日本プロレスに判断を委ねた。タイトル戦かどうかも含めてだったが、結果は2冠戦としてすぐに発表された。大阪城ホールという大会場を埋めるには「ノンタイトルは考えられない。1つのタイトル戦より、2冠戦の方が、チケットが売れる」という新日本プロレスの営業的な判断があったことは想像できる。
「1月5日の東京ドーム大会のエンディングっていうのはメインイベントに勝利した人間のみが味わえる特別な空間なわけですよね。その空間に彼は飛び込んできた。これは1選手としてみた場合はすごいことだと思う。他にも動くべき人間はいたんじゃないの? その中でKENTA選手はいろいろなリスクを背負いながらも動いたわけですよね。その行動に関してオレは素晴らしいことだと思いますね」
内藤はKENTAのプロレスラーとしてのアピールは認めながらも、そのアクションを見逃すわけではないことを付け加えた。
「レスラーのオレからしたら来年やればいいけれど、お客様にとっては、やっぱり今だったんですね。今のオレを見てほしい。今を大事にしてほしい。今を大事にしたい。そういう意味で大合唱を楽しみにしていて下さったお客様にとっては、非常に残念な結果でした。KENTA、ふざけんな、ってことになっていることでしょうね」