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内藤哲也vs.KENTA「最後の2冠戦」。
王者の防衛計画と失敗した男の企み。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/01/28 20:00
2冠のベルト奪取という偉業を成し遂げた内藤哲也。だが、本人の意図に関係なく、タイトルマッチは組まれていく……。
内藤も……そろそろ反撃を用意する!?
内藤は、昨年、右目に上斜筋麻痺という障害が出て悩んでいたが、それを11月に手術で乗り越えた。一時は対戦相手が二重に見えて、試合にも集中を欠いた時期もあったが、その右目も今でははっきり見えるようになって対戦相手を直視できる。KENTAのSNSも隅っこまでチェックすることができる。そしてKENTAにやられてもなぜか余裕が感じられるのだ。
内藤とKENTAには、1月25日から始まったシリーズで連日タッグマッチでの前哨戦が組まれている。そして大阪の1週間前となる札幌・北海きたえーる大会2連戦では、これまでおとなしかった内藤がそろそろ突拍子もない反撃を用意しているのかもしれないのだ。
「一歩踏み出した勇気なんか、だれも評価しねえ」
KENTAと内藤の舌戦は面白い。
互いの痛いところを指摘する。KENTAが「アイツの話長いんだよ」と言いながらも、また言い返す。
「なんでアイツがあれだけ支持者を得ているか。顔がいいわけでもないし、髪型、変なのに。あれだけの人気を誇っている理由、何だかわかる。教えてやるよ。アイツの言葉だよ。
アイツが発する言葉の力。それに引き寄せられているんだよ。オレはそれに気づいたよ。コレ知っているかな、アイツが言った言葉の中で『一歩踏み出す勇気』。知っている? 最高におもしれえ言葉だなと思って。ずっと、新日本っていう大きな会社に守られているアイツが一歩踏み出す勇気? メチャクチャおもしれえじゃん。それにファンが『内藤さん、勇気もらいました。一歩踏み出す勇気が出ました』
いや、そんなきれいごとで渡っていけるほど世の中甘くねえから。一歩踏み出して、うまくいかないこと、ダメだったヤツ、たくさんいるよ。むしろそっちの方が多いかもしれない。ダメになった時、世間は一歩踏み出した勇気なんか、だれも評価しねえから。世間が評価するのは結果だよ。結果だけ。そんな気休めの言葉で、勇気が出ました? そんな甘ったれたこと言ってんじゃねえよ。
肝心なのは、そこから自分で這い上がることだよ。だから、オレもここに来ているんだよ。大阪まで存分に楽しもうじゃねえか。おまえの言う、ちっちゃい一歩踏み出す勇気。見せてくれよ。アホなロス・インゴ・ファンに見せてやってくれよ。まだまだ始まったばっかだぞ。とりあえず、オレが何を言いたいかって言うと、今年の主役はオレだ、ってこと」(KENTA)