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大成への岐路に立つ巨人・戸郷翔征。
真っ直ぐと「自信」をいかに磨くか。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKYODO

posted2019/12/29 11:00

大成への岐路に立つ巨人・戸郷翔征。真っ直ぐと「自信」をいかに磨くか。<Number Web> photograph by KYODO

2019年9月のDeNA戦でプロ初勝利を挙げ、原監督(左)と握手する巨人・戸郷。メジャーリーグに移籍した山口俊の穴を埋められるか。

勢いを、たった1球で止められた。

 そんな戸郷に大役が回ってきたのは、チームが5年振りのペナント奪回を決めた9月21日のDeNA戦だった。

 一軍初登板でいきなり先発に抜擢されると、150km台の真っ直ぐに鋭く変化するカットボールとフォークを武器に、強力DeNA打線相手に5回途中まで2失点の好投を見せた。

 その後は阪神とのクライマックスシリーズ(CS)でも第3戦の先発を任され、3回を1失点。失点は梅野隆太郎捕手に浴びた一発だったが、内容的にはそれほど悪くはなかった。

 高卒1年目で優勝決定試合からCSと大舞台を踏み、結果も残した。何かを持っていると言われ、マウンドには勢いも感じた。

 しかしその勢いを、たった1球で止められたのがソフトバンクとの日本シリーズだったのである。

フルカウントから運命の6球目。

 本拠地・東京ドームでの第3戦。3番手として4回の頭からマウンドに送り出された戸郷は、先頭の6番・松田宣浩内野手を外角のカットボールで三振に仕留めて1アウト。そして打席に迎えたのが内川聖一内野手だった。

 初球は外角低めの真っ直ぐを見逃してボール。2球目の際どいところから動かした外角のカットボールに内川のバットは空を切った。

 タイミングは合っていなかった。

 日本シリーズの大舞台で緊張していないと言えばウソになる。だが、あの内川も自分のカットボールに全くタイミングが合わずに空振りをした。

「いける」という自信が、心身を支配していた緊張感を少しずつ解いていく。

 そしてフルカウントから運命の6球目だ。

【次ページ】 コースも高さも狙い通りだったが……。

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戸郷翔征
原辰徳
読売ジャイアンツ

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