プロ野球亭日乗BACK NUMBER
大成への岐路に立つ巨人・戸郷翔征。
真っ直ぐと「自信」をいかに磨くか。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2019/12/29 11:00
2019年9月のDeNA戦でプロ初勝利を挙げ、原監督(左)と握手する巨人・戸郷。メジャーリーグに移籍した山口俊の穴を埋められるか。
「ポテンシャルはかなり大きい」
「まだまだ発展途上の選手。でも、持っているポテンシャルはかなり大きいと思う。それを彼自信がどう磨き上げていけるか。我々もその手助けをできればいいということだね」
こう語るのは原監督だ。
2019年の戸郷の一軍公式戦登板は2試合で8回3分の2。ただそこで投げたストレートの平均球速150.3kmはチーム内ではルビー・デラロサ、サムエル・アダメス、澤村拓一の3投手に次ぐ4番目の速さだった。
対戦打者に対する奪三振の割合は32.4%と、古川侑利、デラロサに次ぐ3番目の高率で、いまの巨人の若手投手では珍しいパワータイプの投手なのだ。
だからこそ未来へつながる課題は明白だ。
「球威、球速が上がれば三振を取れる確率も高くなる。大きな目標は160kmです」
戸郷の掲げる2020年の目標である。
若手の底上げは必須テーマ。
まずは真っ直ぐに磨きをかけて打たれないボールの質を追い求める。小さくまとまるのではなく、ポテンシャルの大きさを伸ばして、将来を背負って立つ投手への道を歩む――それはまさに星野さんが大成する投手として語った道だった。
来季の巨人の投手陣は決して楽観を許さない。
今季の勝ち頭だった山口俊投手がポスティングシステムを使って大リーグ、トロント・ブルージェイズへの移籍が決まり、エース・菅野智之投手の腰の状態は不透明なままである。
補強らしい補強は韓国プロ野球で今季17勝を挙げたエンジェル・サンチェス投手を獲得したぐらいで、不確定要素が大きいままにV2への船出を迎える。
だからこそ若手の底上げは必須テーマで、その先頭を走るのが戸郷なのである。
「山口さんの代わりになれるように1勝でも多く勝ちたい」――という2年目の右腕の背番号は来季は「68」から「13」へと“昇進”する。その期待を込められた背番号通りの活躍を見せれば、巨人の未来への道も開けることになるはずだ。