プロ野球亭日乗BACK NUMBER
大成への岐路に立つ巨人・戸郷翔征。
真っ直ぐと「自信」をいかに磨くか。
posted2019/12/29 11:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
年末年始恒例、NumberWeb版“プロ野球・ゆく年くる年”。全12球団の今シーズンの振り返りと新シーズンへの期待を綴る短期集中連載シリーズです。
第4回はセ・リーグを制した読売ジャイアンツ。連覇、そして悲願の日本一に向けて必須テーマとなるのは若手の底上げ。そのキーマンと成りえる戸郷翔征に注目しました。
第4回はセ・リーグを制した読売ジャイアンツ。連覇、そして悲願の日本一に向けて必須テーマとなるのは若手の底上げ。そのキーマンと成りえる戸郷翔征に注目しました。
プロ野球の世界に飛び込んできた投手が、必ず経験する瞬間がある。
「いままで自分が通用してきたことが完全に打ち砕かれるというのかな。完璧と思って投げた球を、簡単に打たれた瞬間のショックは計り知れなく大きなものよ」
この話を聞いたのは中日監督時代の故星野仙一さんからだった。
「それはキャンプの紅白戦かもしれないし、オープン戦かもしれない。それとも二軍の試合かもしれないし、一軍のマウンドかもしれない。
でも、プロに来るピッチャーなんてみんな、お山の大将で『打てるもんなら打ってみろ』ってマウンドに上がってきたヤツばかりだからね。自信を持って投げた球を粉々に打ち砕かれる。ショックはデカいわな」
だが、そこから大成する投手とダメになっていく投手の2つに道が分かれると、仙さんは言っていた。
「打たれることを怖がって、コースのギリギリを狙うようになっていくヤツはダメやな。やっぱり『打てるもんなら打ってみろ』と挑んでいける投手じゃないと大成はせん。
ただ、何もしないで『打ってみろ』ってヤツはアホやろ。そのために自分の自信のあるボールをどれだけ磨けるかや」
彗星のようなデビューを飾った。
巨人の戸郷翔征投手はいま、仙さんが語るその岐路に立っている。
彗星のようなデビューを飾った。
宮崎・聖心ウルスラ学園高校から2018年のドラフト6位で入団。プロ1年目の2019年は9月までにファームで11登板、8先発で4勝1敗の成績を残した。
そしてその投球の中で原辰徳監督ら一軍首脳が注目したのは、44回の投球イニングと同じ44個の三振を奪ったボールのキレにあった。