長谷川はバットで快音を奏でる。

「振って、振ってというのも大事。チームの練習で、バットを振る機会が減っているように感じている。バットを振ることの大切さを若い選手たちに気づかせることが出来ると思う。

　またむちゃくちゃやろうかな。あの練習があったからこそ、来年も契約してらえたんです。技術は身を守ってくれる。後輩にはそういうところを見て、学んでほしいという思いはあります。来年のキャンプもまた頑張りたい」

　長谷川は滅多に笑わない。じつはベンチ裏では自身の打撃を愛読している漫画になぞらえて周囲を和ませるなど、意外にお茶目な一面の持ち主でもあるのだが、たぶんグラウンドではそんな表情を見せることはないだろう。

　だけど、それでいい。真っ直ぐに生きる長谷川にファンは心を重ねて応援する。自分の笑顔ではなく周りを笑顔にするために、来季も長谷川はバットで快音を奏でるのだ。