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ホークスの“笑わない男”長谷川勇也。
年俸減も「技術が僕を守ってくれた」。
posted2019/12/18 20:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
「笑わない男」というフレーズが、令和最初の年のスポーツ界のホットワードになった。ホークスでそれが誰かと問われれば、やはり長谷川勇也の顔がパッと思い浮かぶ。
彼の代名詞は打撃の求道者。いかにも笑顔とは程遠い。
バッターボックスでは毎回独特のルーティン。思わず見入ってしまう。“今からボールという名の敵を仕留めにいく”。殺気めいた雰囲気すら漂わせる。
練習でもバットを握っているあいだはオーラ全開だ。試合前のフリー打撃後、そして試合が終わってからすぐと1日2度は素振り部屋に1人籠って鏡の前でスイングを繰り返す。
「1日の流れというか、こういう風になっているなとか強く振れていないなとか、その日の中で感じたことをすぐその場でティー打撃や素振りなりで確認する時間です。
今日は、下半身に力がたまっていないなと思った。スイングに力感がない。ボールを捉えるより先に、気持ちが行ってしまう。また1つ発見というか、思いついたこともあるんで、それをノートに書いて次の試合で試すんです」
このコメントは'11年の取材メモから引っ張ってきた。考え方などは多少違っているかもしれないが、行動そのものは今シーズンもずっと変わっていない。
契約更改の後、長谷川が笑っていた。
ヤフオクドームの素振り部屋の扉には、小さなガラス窓がある。そこから覗き見た表情は、それはもう試合中の打席と変わらぬ鬼気迫るものだった。
「ホントは誰にも見られたくない。1人になりたいから、誰かほかの選手がいる時は行かないようにしていますし」
その言葉を聞いて詫びたこともあった。
その長谷川が笑っていた。12月6日、契約更改後の記者会見の席だった。
「20%ダウンです」
推定で2000万円減の来季年俸8000万円であることを表明した。
「もっと下がると思った」