イチ流に触れてBACK NUMBER
イチローが学生野球の指導者に?
引退後の言動で読み解く、その真意。
posted2019/12/18 11:50
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Kyodo News
「えっ? 本当??」
12月12日、あのイチローさんがプロ野球経験者が学生野球を指導する資格を回復するための「学生野球資格回復制度」の研修会を受講することが発表され、メディア関係者はざわめいた。
確かに、3月21日に行われた引退記者会見でも「何になるのか」を問われた際に「何になるんだろうね。(中略)でも、監督は絶対無理ですよ。絶対がつきますよ。人望がない。本当に。人望がないですよ、僕」と、答えた。
あまりにもインパクトの強い発言に“指導者になるつもりはない”と思い込んでしまった人は、ファンの方々だけでなくメディア側にも多かった。
だが、イチローさんはそのあとに自らの今後についてしっかりとヒントを残す発言をしていた。
「ま、プロの選手、プロの世界というよりも、アマチュアとプロの壁というのが日本は特殊な形で存在しているので。今日をもってどうなんですかね。そういうルールって。どうなんだろうか。今までややこしいじゃないですか。たとえば極端に言えば、自分に子供がいたとして、高校生であるとすると、教えられなかったりというルールですよね。そういうのって変な感じじゃないですか。今日をもって『元イチロー』になるので、それは子供なのか、中学生になるのか、高校生になるのか、大学生になるのかはわからないですけど、そこには興味がありますね」
20時間近い研修会で熱心にメモ。
プロリーグが存在する世界の国々の中で、日本だけにある“妙な規則”に疑問を投げかけながらも、野球界の将来のために自らが日米で得た経験と技術を学生たちに伝える意思があることをこの時点ではっきりと示していた。
12月13日から3日間に及んだ計20時間近い研修会。イチローさんは紺のスーツに身を包み、連日の講義に熱心にメモを取った。全日程が終了した15日には修了証を受け取り、来年2月7日に行われる日本学生野球協会による審査を経て、8日からは学生野球を指導することが許されることになった。