野球のぼせもんBACK NUMBER
ホークスの“笑わない男”長谷川勇也。
年俸減も「技術が僕を守ってくれた」。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2019/12/18 20:00
西武とのCSファイナル第1戦、代打での同点打を「今季の集大成だった」と長谷川は振り返る。
「バットだけは鋭さを増している」
今季は一軍デビュー以来2番目に少ない25試合しか一軍では出場できなかった。1億円以下の減額制限である25%ダウンを提示されても不思議ではなかった。
しかし、長谷川が笑顔になった理由は“カネ”ではない。会見の終盤、そして会見終了後の囲み取材で溢れんばかりの自信が込められた言葉を次々と口にしたのだった。
「今シーズンはファームにいる時間が長かったけど、自分の技術のことだけに集中した」
「来年何歳だっけ? 36のシーズンですかね。結構トシを取って、体はいろんなところにガタがきている。だけどバットだけは錆びるどころか鋭さを増している。試合数さえあれば、ヒットを増やすことも(一定以上の)打撃成績を残すのも自信がある」
自分の年齢を忘れてしまうほど、「衰え」という言葉とは無縁だと心の奥で胸を張っている。
凄まじい成績でも、登録抹消の憂き目。
もちろん体がきついのは否めない。'14年に右足首を痛めたにもかかわらず、残りのシーズンを無理して戦った代償はあまりにも大きかった。その時を境にして出場機会は減少している。
スタメンよりも代打機会が増えた。たった1打席、僅かひと振りのチャンス。それでも、長谷川はきっちりモノにする。チームが苦しくなった時、一番頼りになって誰よりも輝きを放つ。そんな存在だ。
しかし、体に不安があると考える首脳陣は起用法に頭を悩ませることがある。代打で起用すれば、その後は守備や代走でもう1人の選手をベンチから送り出すことになる。
今年8月21日、長谷川は出場選手登録を抹消された。約1カ月前に一軍昇格してから35打数13安打3本塁打9打点、打率.371、OPS1.221と十分すぎるほどの成績を残していたのだが、チーム編成上の理由だった。
「正直、心折られました。一瞬『いいや』という気持ちになりました。そんな気持ちになったのは初めてでした」