マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「次の奥川恭伸」候補を熊野で発見。
遊学館1年・土倉瑠衣斗は逸材だ。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/12/02 08:00
夏の甲子園を沸かせた関東一、鶴岡東両校の新チームが秋の熊野で見られる。まさに「秋の甲子園」なのだ。
松中信彦と奥川恭伸の才を持つ1年生。
「松中(信彦・元ソフトバンク)のホームランって、引っ張った打球もぜんぜん切れないで、まっすぐスタンドに持っていってたでしょ。こいつも、そういう打球打てるんですよ」
山本監督がしきりに褒めていた土倉瑠衣斗(るいと)一塁手(1年・182cm80kg・右投右打)が、右のバッターボックスに入る。
1年生のムードじゃない。
高校野球の秋は、始動のタイミングが遅れインパクトで差し込まれる打者がほとんどの中で、この1年生は投手との“間合い”がとれている。
早めに始動して、ボールを待ち構える。トップを取ろうとする意識がはっきり見てとれる。
「トップ」とは、振るための準備動作じゃない。
むしろ振らないため、つまり打ちにいってもヒットにならない誘い球を見極めるために作るのがトップであることを、忘れてはならない。
この土倉選手、打ちそうなムードあふれる4番打者を警戒する相手投手の誘い球を、ことごとく見極める。
そしてそんな中からわずかな失投を捉えて、左腕のスライダーをレフト左へライナーで弾き返し、バックスクリーン左にあわやの大放物線をかけてみせた。
「3年の夏には“150”まで」
さらに、翌日の報徳学園戦だ。
「ぜんぜんムリさせてない今で140キロちょっと。3年の夏には“150”まで行くんじゃないですか。第2の奥川(恭伸、ヤクルト入団)にします! 奥川の1年秋って、これぐらいだったでしょ」
山本監督がバッティング以上に高く評価していた「投」のお披露目だ。