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日本人の若きタレントが揃い、
来季のMoto3が俄然面白くなる!
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2019/12/01 19:00
左から、鈴木竜生(8位/2019年成績、以下同)、小椋藍(10位)、鳥羽海渡(19位)、佐々木歩夢(20位)、真崎一輝(27位)。
子供時代からレースを始めた十代のライダー達。
今年、Moto3クラスに参戦した日本人選手は5人。
3年目の鳥羽海渡、佐々木歩夢(ホンダ/PETRONAS SPRINTA RACING)。2年目の真崎一輝(KTM/BOE Skull Rider Mugen Race)はともに19歳。ルーキーの小椋は18歳。5年目の鈴木は22歳。鈴木をのぞく4人は、'14年にホンダとグランプリを運営統括するドルナが共同でスタートさせたライダー育成シリーズ「アジアタレントカップ」出身のライダーである。
ポケバイ、ミニバイク時代から切磋琢磨してきたライバルたち――子供のころから同じサーキットでバトルを繰り広げ、「アジアタレントカップ」でホンダの育成ライダーに選ばれてからは、グランプリの登竜門となる「ルーキーズカップ」やFIM・CEVレプソル国際選手権で世界各国のライバルたちとしのぎを削ってきた。その中でしっかり結果を残してきた日本人選手たちだけに、今年の活躍は、期待通りと言ってもいい。
グランプリはどのクラスも1チーム2台体制が基本で、選手にとって最初のライバルはチームメートとなる。そして、次に意識するのは同郷のライバルたちとなるが、そういう点では、ホンダ・チーム・アジアに所属し3年目の鳥羽とルーキーの小椋は、どちらの要素を持ち合わせており、今季では特にこの2人の活躍に注目が集まった。
原田哲也の姿に重なる小椋藍。
ルーキーの小椋藍は、鳥羽、佐々木、真崎と同学年だが、彼だけは1月生まれ。子供のころから一緒に戦ってきたが、早生まれの小椋は、身体の成長もレース参戦のタイミングも、ちょっとずつ遅れた。その遅れを今年は一気に取り戻す活躍だった。
とにかく、小椋のレースに対するストイックさは、今季Moto3クラスに参戦した日本人選手の中では際立っていた。
「1年目だが勉強のシーズンだとは思っていない。1年目の目標は'17年にチャンピオンになった(ジョアン・)ミル。彼の1年目の成績を目指す」と語っていた小椋。
ミルは一年目のシーズンに初優勝を達成して総合5位。翌年10勝を挙げてMoto3チャンピオンに輝き、Moto2クラスで1年戦い、今年MotoGPライダーになっている。彼の速さを目標にする小椋は、彼のリザルトにこそ届かなかったが、3回のフロントローを獲得、表彰台1回で総合10位という結果を残した。
小椋は、時間があればバイクに乗ってトレーニングに励むという。モトクロスやモタードなど、オフロードバイクに乗せたときのセンスの良さは、これからの成長を大いに期待させるものだ。そして、自己分析、ライバルの分析能力も高く、彼の話を聞くと、大接戦、大混戦が続くMoto3クラスで、だれがどんな戦いをしているのか、その全体像がわかるほどなのだ。
筆者からすると小椋は……1993年に250ccクラスにデビューして世界チャンピオンに輝いた原田哲也を彷彿させるライダーと言える。2年目となる2020年は、間違いなくMoto3クラスのチャンピオン候補のひとりだ。いま、イチバン注目されている日本人選手と言ってもいい。