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J1出場1試合で、ACL決勝の大舞台へ。
浦和の控えGK福島春樹の拠りどころ。
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byGetty Images
posted2019/11/08 11:00
第31節鹿島アントラーズ戦でJ1デビューを飾ったGK福島春樹。プロ4年目、ACL決勝という大きなチャンスが巡ってきた。
ふてくされてしまうことも。
だが西川の壁は高く、同年の公式戦出場は前述の3試合のみ。リーグ戦は34試合中26試合で控えに入ったものの、出場機会はめぐってこなかった。2002年から18年まで浦和のGKコーチを務め、今季から浦和のクラブスタッフを務める土田尚史氏は、こう振り返る。
「福島にとって大事だったのは、練習で基本を反復しながら、確実にやるべきプレーを、確実にできるようにすること。ただ浦和では、学生時代は試合に出ていたのに、出られないという状況に、どれだけ向き合えるかが求められていました」
'18年の浦和のGK陣には榎本哲也(現カターレ富山)もおり、福島は2番手を争う中でベンチからも外れると、ふてくされてしまうことがあった。土田氏は、そんな態度を厳しく指摘したこともあるという。
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「GKはポジションが1つしかなく、1番手から3番手までが決まる瞬間がありますが、福島は現実を受け入れられないような態度でした。階段を一歩ずつ上ってはいましたが、メンタル面にムラがあった。次に向かって前向きに取り組むことが、あまり上手ではなかったです」
「出られない状況に向き合う」
新たに浜野征哉GKコーチが就任した今季も、福島の状況は変わらなかった。
7月に流通経済大と対戦した天皇杯2回戦が唯一の公式戦出場で、J1リーグは全試合で控えに入ったものの、西川の出場停止が決まった直後のサンフレッチェ広島戦も出場機会なし。だが試合後には複雑な思いを語りながらも、土田氏が指摘した『出られない状況に向き合う』ことに、意識を向けていた。
「2番手という立場で、(リーグ戦で)チーム状態が良くなくても試合に出られないのは悔しいし、メンタル面を保つのは難しいです。でも、だからこそチームのために2番手として何ができるか、それを考えさせられたシーズンになっているし、人間的にも少しは成長できたと感じています」