炎の一筆入魂BACK NUMBER
鈴木誠也の打者、人間として凄み。
成長の陰に「野球の神様」のお告げ。
posted2019/10/28 19:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Kyodo News
4連覇を逃した広島で、今年最も成長した選手は誰か──。
途中から1番に固定された西川龍馬や高卒1年目で53試合にスタメン出場した小園海斗らの名前が挙がるかもしれない。
ただ個人的には、チームの絶対的主砲に成長した鈴木誠也の成長には目を見張るものがあったように感じる。打者としてのすごみが増しただけでなく、25歳となった1人の大人、男として一段階も二段階も駆け上がった印象が強い。
今年初の個人タイトルとなる首位打者、最高出塁率を獲得した。そして今、日の丸を背負う侍ジャパンの4番として世界舞台に臨もうとしている。
「我慢が大事」と心は折れず。
プロ7年目、8月に25歳を迎えた1年は、景色が違って見えた。
昨季まで打線の中核を担った丸佳浩(巨人)がFAで抜け、精神的支柱の新井貴浩氏はユニホームを脱いだ。
選手会長である會澤翼がどっしりとした大黒柱に成長したが、ともに支える存在と期待された主力組が振るわなかった。田中広輔はひざへの不安もあり大不振。菊池涼介はシーズンを完走したものの、松山竜平は前半戦の不振が響いた。投手でも中崎翔太や一岡竜司など3連覇に貢献した主力の不調、不振が目立った。
柱が少なければ、チームは安定しない。シーズン通して不安定な戦いを余儀なくされたことが、チーム事情を物語っていた。
ただ鈴木は打線全体が低調で、相手バッテリーから徹底的なマークを受けても「我慢が大事」と一度も心は折れなかった。シーズン終盤には4番から3番に上げた新打順にも適応。1年を通して安定した成績を残した。