球道雑記BACK NUMBER
明大・森下暢仁が過ごした4年間。
注目右腕がドラフト前の心境を独白。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byRyotaro Nagata
posted2019/10/16 11:50
大学4年間でひと回りも、ふた回りも成長した森下暢仁。どのユニホームに袖を通すのか。
「もういいや」と投げ出したことも。
大分商3年の夏、侍ジャパンU-18代表にも選出されるなどその素質を高く買われ、鳴り物入りで明大に進学した。1年春のリーグ戦からさっそく登板機会を得ると、2年春には5試合に先発して2勝。その夏には侍JAPAN大学代表にも招集されて着々と実績を積み上げた。
一方で明大はその春から5位、2位、3位、4位と4季連続で優勝を逃すなど低迷。3年春には齊藤大将(現・埼玉西武)から明大のエース格の背番号11を引き継いだ森下だが、接戦をモノに出来ないピッチングが続き、殻を破れずに苦悩していた。
当時を振り返って言う。
「その頃は代表に入っている以上、東京六大学リーグで投げることが当たり前になってしまっていた。負けているのにどうやったら結果が出るのかとか、勝てるようになるにはどうやっていけば良いのかを考えていなかった。負けているのに『もういいや』と投げ出している自分もいた。そこに対する取り組み方が甘かったなと思います」
チームをひとつにしたエースの謝罪。
転機となったのは今春のリーグ初戦となった立教大学1回戦のことである。森下はゲーム中盤に崩れて4失点。試合も0-4で黒星スタートとなり、チーム全体に暗雲が垂れ込めた。試合後のロッカールーム、エースはチームメイト全員の前で頭を下げた。
「2回戦に勝って、3回戦でもう一度投げさせてほしい」
この言葉にチーム全体がひとつになった。
「あれがあってチームも引き締まって、みんなの硬さも取れた。みんながやってやろうという気持ちが前面に出て来たんだと思います。やっぱりここにいるメンバーは神宮を経験しているメンバーが少なかったので……」(森下)
明大は続く立大との2回戦を4-3で勝利。森下は3回戦で4安打1失点の完投勝利で汚名返上し、きっちり勝ち点1を挙げた。
その後のリーグ戦でも東京大学との1回戦、延長10回で20個の三振を奪う完封勝利を記録するなど、快投が光った。終わってみれば8試合53回1/3を投げて自責点12。防御率はキャリアハイの2.03の数字を叩き出し、球速も常時140km台後半を計測し、最速は154kmまで伸びた。