球道雑記BACK NUMBER
明大・森下暢仁が過ごした4年間。
注目右腕がドラフト前の心境を独白。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byRyotaro Nagata
posted2019/10/16 11:50
大学4年間でひと回りも、ふた回りも成長した森下暢仁。どのユニホームに袖を通すのか。
アップデートした変化球。
変化球に対する考えも試合を重ねるごとにアップデートされていった。
「どの球も出来るだけ真っ直ぐの軌道に入れる」
「曲げたいと意識するのではなく、真っ直ぐの軌道からちょっとだけ曲がってくれれば」
近年、MLBを中心に日本でも広まりつつある「ピッチトンネル」の概念を善波達也監督とのセッションの中で自然に磨いていった。
「真っ直ぐをしっかり投げられていても、同じ腕の振りで変化球も投げていかないと相手にもバレてしまう。真っ直ぐと同じラインでカットボールだったり、フォークボールだったりを入れることができれば、打者も変化球だと分かりづらくなる。それは意識しています」
日米大学野球では最高殊勲選手賞に。
カウントも取れて、決め球にも使っているカーブにも、使い方にしっかり意図を持たせるようになった。圧巻だったのはこの夏の日米大学野球。神宮球場で行われた第5戦の4回表、アメリカ代表の4番ヘストン・キースタッドを迎えた場面だ。
初球をアウトサイドへのカーブで、ボテボテのファールを打たせた森下は、2球目をアウトサイドの高め150kmのストレートで3塁側スタンドにファールを打たせてあっさりと追い込んだ。カーブにもタイミングが合っていない。ストレートにも振り遅れていると冷静に相手を分析すると、続く3球目は相手打者の目線を上げるように外寄りの高めにカーブで1球外した。
そして、次の4球目はバッターの胸元から今度はワンバンになるほど鋭く落とす縦割れのカーブで空振り三振。前の試合で左越えのランニング本塁打を打たれている相手主砲にしっかりと借りを返した。
「空振りを取りに行くときはワンバンというかもっと手元で曲がるように意識しています」
ゲーム全体でも5回59球を投げて、バントヒット1本に抑える完璧な投球だった。3試合で15回を投げ、大会防御率1.20の成績を残した森下は、最高殊勲選手賞に選ばれ、日本代表の優勝にも大きく貢献した。