マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
青森山田・堀田賢慎の剛球を受けた。
直球の回転音が美しいドラフト候補。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byMasahiko Abe
posted2019/10/16 17:00
佐々木朗希、奥川恭伸の2人に注目が集まりがちだが、高校生投手では堀田賢慎の名も忘れたくない。
アップだけで、もうオーラが違う。
新チームがこの秋の「青森」を勝ち抜いて、東北大会の盛岡に出かける日の取材になった。
朝8時、スッコーンと抜けるような秋晴れ。
普段なら眠くてボンヤリしている時間だろうが、もうすでに、トップスピードの走りでアップに入っている堀田賢慎の姿が、外野の向こうに見えている。
逸材は、探さなくても向こうからこっちの目に飛び込んでくる。長い手足がしなやかに躍って生み出す大きな運動量が、秋の澄みわたった青空によく映える。
千両役者!
アップだけで、もうオーラが違う。
前の取材の時に、堀田賢慎の「ボール」は見ていた。同期の安田優斗捕手のマスクのすぐ後ろから、しっかり見せてもらっていた。
なんだよ、ボール、違うじゃん!
七分、八分の力感にだまされちゃいけない。そんなもんかと、ナメてかかったら、ミットが吹っ飛ばされるボールだ。
立ち投げだけは、何球か受けてもいた。その“立ち投げ”から始める。
なんだよ、ボール、違うじゃん……!
この前と同じ立ち投げなのに、なんでこんなに“パワー”が違うんだ。
この前と違うのは、こっちがユニフォームを着ていること。それだけだ。
きっと気分が違うんだ。こっちがユニフォームだから、本気モードなんだ。そういうセンスがフレッシュ。これから伸びていく人の“勢い”が伝わる。
シュルシュル……っと、ボールの回転音が聞こえる。受けてる者だけに聞こえる音だ。立って受けても、こちらの顔より高いボールがない。
きれいなオーバーハンド。真上から投げ下ろして、高校生ならまず力むから、頭より高いボールが再三はさまるのが普通だが、今日は逆に低い。
ベルトより下のボールがホップして見える。
今日の相手は手ごわいぞ……。