目を引いた「日本人らしくないメンタル」。

　FCバーゼルとヤングボーイズの2強が覇権を争う同リーグにおいて、第3のクラブといえるのが柿沼の所属するFCルガーノだ。昨季3位でフィニッシュし、今季はELの舞台でも戦う古豪である。

　日本では全くの無名だった19歳は、9月上旬にチームに合流したばかりだが、すでにトップチームとELの登録メンバーにも名を連ねている。

　ルガーノでSDを務めるマルコ・パドリーノは、柿沼を獲得した経緯をこう説明する。

「彼がヘタフェでプレーしていた頃に、友人のエージェントから紹介されたんだ。『マルコ、お前のチームで揉まれたら面白くなる選手がいるぞ』という風にね。そこでルガーノにリキを呼び、練習に参加させた。

　まず、彼のドリブルスピードに驚いたよ。速いだけの選手ならたくさんいるが、彼はボールを持って加速していく過程で、プレーの精度が全く落ちない。そういった選手はごく稀だし、技術的にはここでも充分通用するものがあった。

　加えて、『絶対に自分で勝負してやる』という、良い意味で日本人らしくないメンタルも目を引いた。上に登っていける選手だと確信したよ。まだ19歳ということもあり、五輪を狙えるという年齢も編成的には魅力だった」

ドリブルだけなら同世代トップクラス？

　選手としては、スピードとドリブル技術に特化した生粋のサイドアタッカーである。以前所属したヘタフェユースチームの総監督であるイヴァン・ルイスは柿沼の特徴についてこんな表現をしていた。

「ドリブルに関していえば、リキは同世代のスペイン人の中に入ってもトップクラスだった。だから、チームとしても彼に自由を与え、『好きに仕掛けてよい』と伝えていたよ。

　ただ、サッカーというスポーツはドリブルだけではない。時にはシンプルにボールをはたき、味方を使うことも必要だ。リキには、『状況判断が伴えば君はもっと素晴らしい選手になる。ヨーロッパのトップリーグでも活躍できるレベルに到達するはずだ』と伝え、チームから送り出したんだ」

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